客足が絶えない名物商店街の「尖った思想」 チェーン店を蹴散らす「すごい個性」

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店主だけでなく、お客の側も気軽に行きやすい雰囲気がある。このエリアが特徴的なのは、屋台を改装したり、ビニールシートで店外を覆うなど”気軽に入れる”ことを重視した店が多いこと。お客が入店するまでの心理的ハードルをいかに下げるかが重視されているのだ。

こうしたことが好循環となり、天満、中崎町などではバル、フレンチ、カレー、和食、立ち呑み、寿司、中華、ビールや餃子専門店など、個性的なサービスで挑戦をする若い店主がどんどん現れ、活気に満ちている。

天神橋筋商店街の入り口

また、チェーンではない個人の店が占める割合が高く、ディスカウントストアでは、100円を切るような激安価格が乱立する。

行列の絶えないコロッケ屋の「中村屋」、大阪発のたこ焼き屋「わなか」、合格祈願パン、まんじゅうが買える菓子工房の「マルイチ菓舗」、150年以上の歴史を持つ老舗大福屋の「薫々堂」など、食べ歩きを存分に楽しめる。

さらに古書に特化した古本屋、専門書を広く取り扱う本屋、希少レコードの販売店や、骨董品屋までマニアには堪らない店舗も存在する。ヒョウ柄やアニマル柄に特化したアパレル店「なみき洋品店」や大瓶ビールを300円程度で提供する飲食店もある。とにかくチェーン店以外の店も非常に元気なのだ。

テナントの空きが非常に少ないのも特筆すべき点だ。客層は、日用品や食材を買いにきた主婦やお年寄りから、学校帰りに立ち寄る10代の若者まで幅広い。ある意味、最も市民の生活に密接した大阪らしい商店街と言っていいかもしれない。

同商店街にある、天六商店街振興組合理事長の吉村孝司氏はこう話す。

「今も昔も、天神橋筋のよさというのは、混沌とした大阪らしさだと思います。よく、ここを工事してきれいにしよう、改装を進めようという話もいただきますが、そうすることで消えていくものもある。

今の雰囲気が好きで、ここで商売をしたいという若者のことを考えないといけない。全国どこの商店街でも、後継者問題に悩まされていると思いますが、若者にとって魅力のある場所を作り、守っていくのが私たちの役割で、そうすればその問題は乗り越えられると思っています」

こうした考えから、同商店街では、近辺の飲食店やショップを営む若者たちと定期的に意見交換の場を持ち、交流を深めている。

行政に頼らずにいかに発信力を強めるか

商店街を盛り上げようにも、金策から周辺との連携や企画まで行政に頼りきりという商店街は少なくない。しかし、それではいけないと吉村氏はいう。

「行政との付き合い方は、持ちつ持たれつの関係が理想的。もし天神橋筋商店街が行政に頼り始めたら、ほかの商店街はどうなってしまうのか?という強い自負があるので助成金も受けていません」。

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