名古屋めしの「存亡危機」に地元が放つ大胆策 進化形の「豪華メニュー」が続々登場する背景

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プロジェクトには、なごやめしを提供している店であれば、業種や地域を問わず参加することが可能。実際、岐阜県の店も加わっている。

なごやめしは種類が多すぎる上に、誕生した時期や経緯もそれぞれ異なる。その定義を明確にする議論を進める中で、「なごやめしは、どれも探究心あふれる店主が試行錯誤を繰り返し、お客の意見にも耳を傾けながら生まれたものだと、あらためて気が付いた」と前田さんは語る。

プロジェクト参加店に配られるプレート(筆者撮影)

「現在はファストフード店のような杓子定規な接客が主流になり、お客と店との距離感は遠くなっている。その距離を縮めることも、プロジェクトの目的のひとつでした」(前田さん)。

そこで、プロジェクト参加店には「うみゃあで なごやめしの店」と書かれたプレートと、「なごやめしの日」のおすすめメニューやサービスを告知する用紙1年分を配布することにした。店と客の距離感を縮めるためのツールといってよいだろう。

グルメサイトにも載っていない「小さな店」が大奮闘

河村たかし市長も出席したナンバープレート授与式でのひとコマ(筆者撮影)

今年2月頃から市民グループのメンバーがそれぞれのフェイスブックで参加を呼びかけたところ、50店を超える申し込みがあった。4月8日を第1回目のなごやめしの日としてスタートするべく、3月末には参加店を一堂に集めたキックオフイベントを開催。

「河村たかし名古屋市長を招いて、プレートの授与式も実施しました。皆で地元を盛り上げようと、一体感を深めることができました」(前田さん)。

7月現在、参加店は62店まで増えている。喫茶店や麺類食堂、洋食店と業種はさまざまだが、大手グルメ情報サイトにも載っていない個人経営の店が中心だ。

春風荘「特製天おろし」(筆者撮影)

中でも異彩を放つのが、中区千代田の「春風荘」。蕎麦通の間では名古屋屈指の名店として知られるが、当初「蕎麦はなごやめしではないだろう」と話題になった。

「確かに蕎麦は東京が本場ですが、名古屋で独自に進化を遂げた部分もあります。名古屋の蕎麦文化を発信したいと思い、プロジェクトに参加しようと思いました」と、店主の鈴木健之さん。4月のなごやめしの日には、愛知県の県魚や車海老の天ぷらが乗る「特製天おろし」(1620円)を用意した。5月以降も八丁味噌ベースの自家製ダレで味わう「赤のそばがき」(1620円)などを打ち出している。

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