「電車非常ボタン」意外に違う各社の緊急対応 トラブル発生!すぐ停車?次の駅まで走行?

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地下鉄は東京メトロ、都営地下鉄とも次の駅まで走行して対応するのが基本だ(写真 :YNS / PIXTA)

大勢の人々が乗り合わせる電車内では、トラブルが起きることも当然ながらあり得る。鉄道各社は「緊急で乗務員等に知らせる必要があるときは、ためらわずに車内非常通報装置を使用してほしい」と呼び掛けている。

だが「非常通報ボタンが押された関係で停車している」といったアナウンスを度々耳にすると、果たして電車が停車しなければならないトラブルなのかと悩む人もいるに違いない。

現在、電車内に設置されている装置には大きく分けて2タイプがあり、非常事態の発生をブザーなどで知らせるタイプと、インターホンのように乗務員と通話できるタイプがある。

近年普及が進んでいるのは通話できるタイプで、首都圏では東京メトロ、都営地下鉄、京成電鉄、東急電鉄が全車両を通話できるタイプに統一済みだ。他社も通話できるタイプが大半となっており、例えば小田急電鉄は全164編成中の133編成が通話できるタイプになっているという。ブザーのみのタイプだと乗務員が現場を確認しに行く必要があるが、通話タイプならその場で連絡が取れるため、トラブルの状況を迅速に把握しやすい。

通話タイプのさらなる普及を

各社がそれぞれに定めている非常通報ボタンへの対応だが、急病人の発生や乗客同士のトラブルなどの場合、駅に停車してからのほうが病人の搬送などでもスムーズな対応が期待できるほか、駅間で停車することによる時間のロスもなくなる。逆に、車両トラブルの場合はその場で停車して対応したほうが、事故などを未然に防げる可能性が高いだろう。

非常ボタンの使用は電車の遅れの原因になると指摘する声もあるものの、トラブルがあった際に「遅れ」を気にして使用をためらわせることがあっては、車内の安全を確保する上ではマイナスとなる。安全・安心の確保と安定運行の維持を両立する上では、通話によってトラブルの状況を確認し、対応を判断できる通話可能なタイプの非常ボタンのさらなる普及が現状では最も有効といえそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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