神奈川県で勃発!与党3候補の仁義なき戦い 安倍首相は万遍なく応援したものの・・・

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その後、午後5時から川崎駅西口で行われたのが、無所属で自民党推薦の中西氏の街頭演説会だ。安倍首相は少し遅れて、5時30分に到着している。

2009年の横浜市長選で落選した後、2010年の参院選でみんなの党から出馬したことが響き、自民党神奈川県連との関係がいまいちよくない中西氏だが、今回は麻生太郎財務相の為公会(いこうかい)が全面的にバックアップ。この日の街頭演説会の司会を務めた牧島かれん衆院議員や松本純衆院議員、そして河野太郎国家公安委員長らが応援している。

麻生氏は閣内では、菅義偉官房長官との確執があると言われている。自民党公認の三原氏は“菅ガールズ”と言われているので、中西氏とすればさらに負けられない相手だ。

この日の西口のロータリーは人であふれており、桜木町駅東口で行われた三浦氏や三原氏の街頭演説会の観衆よりもはるかに多いように見えた。しかも若者の姿が目立っていた。いくつかの事前調査で当落線上にいるとされた中西氏の意地を見た思いがした。

「三原じゅん子だけが公認候補」と強調

神奈川県選挙区の与党候補のなかでは圧倒的に優勢とみられているのが三原じゅん子氏だ

その中西氏が街頭演説会で何人集められるかを気にしていたのが、三原氏の陣営だ。事前調査全てにおいて三原氏は断トツでトップを走り、圧倒的な強さを見せている。それでも決して警戒心を緩めようとはしない。

「自民党が自信と責任をもって公認しているのは三原じゅん子だけ」。午後6時から桜木町駅東口で開かれた街頭演説会で、挨拶のためにマイクを握った山本朋広衆院議員がこう断言した。

これは明らかに自民党推薦の中西氏をけん制する言葉だ。実際に神奈川県連は26日に「総裁遊説の対応について」を党所属国会議員に配布し、27日に安倍首相が参加する3つの街頭演説会のうち、三原氏の街頭演説会以外には行かないように要請した。安倍首相も三原氏を「わが党唯一の公認候補」と明言し、他の候補と区別した。そして6年前の出馬について、「下野した自民党から、かつての大物政治家も出ていった時だ。それなのに三原さんは自民党をあえて選んでくれた。我々はその勇気にこたえなければならないと思った」と最大限に称えている。

しかし自民党神奈川県連の要請にもかかわらず、公明党の三浦氏の街頭演説会には、鈴木馨祐衆院議員、福田峰之衆院議員、そして三原氏の街頭演説会で中西氏へのけん制発言を行った山本朋広衆院議員までもが顔を出していた。いくら県連からの強い要請があったとしても、公明党の協力なしで次の衆院選は戦えない――そんな自民党議員の苦しい現実がありありと表れていた。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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