元原子力規制委員が大飯原発の危険性を警告 島崎・東大名誉教授「関電に過小評価の疑い」

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大飯原発3、4号機の再稼働をめぐっては、2014年5月に原告住民の勝訴となる運転差し止めを福井地裁が命じている。その判決では次のように指摘されている。

「1260ガルを超える地震によって冷却システムが崩壊し、非常用設備ないし予備的手段による補完もほぼ不可能になり、メルトダウン(炉心溶融)に結びつく。このことは被告(関電)も自認しているところである」

当時、関電が規制委の審査会合で示していた基準地震動は700ガル。その後、規制委との議論を経て856ガルに引き上げて概ね了承を取り付けたものの、今回、島崎氏から「そもそも、関電が基準地震動設定の基礎に用いた式そのものに欠陥がある」との問題が提起された。

しかも驚くべきことに、島崎氏は関電が申し立てた名古屋高裁金沢支部での同裁判の控訴審で、住民側弁護士の依頼で陳述書を提出しており、そこで関電の地震動評価について「過小評価の可能性」を指摘している。こうした流れを踏まえて朝日新聞などが島崎氏の問題提起について報じたことにより、事の重大性が世の中に知られるようになった。

今回、規制委が"すでにやめた人"である島崎氏との面談を設定したのも、こうした経緯によるところが大きい。田中委員長も16日の面談の冒頭で、「本日も大勢のマスコミが集まっている。国民も関心を持っている」などとして、問題が無視できなくなっているとの認識を示した。

このままでは福島の事故が繰り返される

原子力規制委と島崎氏の意見交換面談

「どうされるかは委員会のマター。くちばしをはさむつもりはない」「すでに辞めた人間が申し上げるのも口はばったいのですが」と言いつつも、島崎氏は田中委員長ら規制委に審査のやり直しを強く求めた。

その理由について、意見交換終了後のぶらさがり会見で島崎氏は、「(東日本大震災と同じこと(=想定外の大惨事)が、日本海側で再現されつつある。今であれば(対策の)やり直しがきく」とし、そのうえで「専門家であれば計算し直すのに大して時間はかからないはず」と述べている。

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