三菱自動車、一律10万円補償は妥当なのか 対象は悪質不正があった軽4車種のユーザー

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つまり、燃費に偽りはなくとも、申請した走行抵抗値には偽装があった。そこでこの不正の対象車にはお詫び金の意味を込め、ギャランフォルティスと同額の3万円を補償する方針だ。

補償金を払わないのは1991年から国が定めた法規と異なる測定方法(三菱自動車は社内用語で「高速惰行法」と呼んでいる)で走行抵抗値が計測されていた車種や、実際に計測をしないで机上計算で走行抵抗値を求めていた車種が該当する。

これらは、計測のプロセスは不正だが、走行抵抗値の恣意的な改ざんはなく、結果として出てきた燃費も変わらない。不正な方法で測ったが、走行抵抗値に偽りはないので補償の必要はないと判断したようだ。

ユーザーへの直接補償はこれで打ち止めか

「eKワゴン」のユーザーには10万円が補償される

補償金は、国土交通省が6月末に発表する正しい燃費値を確認した後に支払う見込みだ。三菱自動車はユーザーへの補償にそなえ、前2016年3月期に150億円を燃費不正関連特別損失として引き当て、さらに2017年3月期に500億円を積みました。今後、販売店への補償などの問題は残っているが、ユーザーへの直接補償に関してはこれをもって一応のメドをつけたことになる。

だが、ユーザーからしてみれば補償金をもらえるのは走行抵抗値の改ざんが認められた車種だけ。補償金額はガソリン代の差額や税金の増額分など、合理的に算出できるものを根拠にしており、ブランド価値の毀損やユーザーの心理的な負担などの数値化できない損害は見積もれないという立場だが、はたしてユーザーは納得するか。失った信頼を取り戻すためにはまだ紆余曲折がありそうだ。

(撮影:大澤誠)

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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