中学生が売春に走る沖縄の貧困の残酷な現実 娘を風俗店に売る母親も珍しくない

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「シングルやネグレクト家庭が多いから、一部の子供たちはどうしても中学生で自立を迫られる。中学生は普通のアルバイトはできないので、どうしても夜に流れる。10年くらい前まではキャバクラがそういう未成年の働く場所になっていたけど、条例(青少年保護育成条例)が厳しくなって、ちゃんと看板を掲げるキャバクラは未成年を雇用しなくなった。だから違法ピンサロに、どんどん流れるわけ。結局、中学生を雇うところは少ないから集中する。賃金を安くしてもほかに移る店がないし、辞めないから買いたたく」

早くに自立を迫られる貧困世帯の未成年たちは、ピンサロや援デリ(売春組織)、個人売春などをして、なんとか収入を得る。16歳を超えれば飲食店やコンビニなどの仕事がある。未成年の中でも、特に貧困家庭の中学生が経済的に困っているという。

「キャバクラが昔みたいに未成年を囲えば、売春する未成年は減りますよ。子供はカラダ売るより、キャバクラのほうがまだいい。いろいろな人との会話、接客することが勉強になるわけだし。一度、中学生を雇用しちゃうと、県全体から集まる。一人が働くとその友達に口コミで広がるから読谷の子が多い年もあれば、コザや宜野湾が多かったり、バラバラ。未成年は松山だけじゃなくて、仕事ができる場所と店に集まる」

中学生の娘を売る母親も珍しくない

貧困と格差が蔓延する沖縄の現実は、とんでもないことになっていた。本土で生活するわれわれには信じられない話だったが、上地氏は当たり前のように語っていた。

「10日くらい前、うちで働く母親が娘を連れてきましたよ。中学2年だったかな。“娘がおカネを返さない、働いて返してもらう”って言っていた。もうメチャクチャですよ。未成年を雇うのは簡単だけど、うちはできるだけ長く営業したいから手を出しません」

沖縄は産業と雇用の多くを米軍基地やその周辺のサービス業、観光業などに頼ってきた。民間投資が多くはないため、圧倒的におカネが足りない。いびつな状況は、すぐに繁華街の現実に表れる。違法店舗を摘発しても、経済的に困る女の子たちは別の場所に流れるだけだ。大人の女性はもちろんだが、特に子供たちには、売春してほしくない。それを止める手段は、今の沖縄のどこにあるのだろうか。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。

 

中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けてつづけている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮社)、『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)など多数。Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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