浮上してきたサミット「花道」退場論

浮上してきたサミット「花道」退場論

塩田潮

 支持率低迷で末期症状の福田康夫首相だが、7月の洞爺湖サミットには並々ならぬ執着心だという。父親の福田赳夫元首相は初の日本開催サミットを7ヵ月後に控えた1978年11月、自民党総裁選に敗れて退陣となった。首相秘書官だった康夫首相は、父親の無念を晴らしたいという思いが強いのだろうと見る人が多い。

 ところが、一方で「サミット花道論」も自民党内で流れ始めた。サミット終了後に首相交代という設定だが、「退陣だろう」という政局予想と「退陣しろ」という倒閣論の両方の意味がある。実は30年前、赳夫首相のときもサミット花道論が浮上した。このときは福田陣営が相手の大平側に「79年の東京サミットまで福田内閣で」と持ちかけ、政権存続の駆け引き材料として使ったのだ。だが、今回、花道論浮上の底流にあるのは福田首相では総選挙を戦えないという議員心理だ。

 次期総選挙は今後の日本政治の帰趨を決める「天下分け目の戦い」と誰もが思っている。自民、民主両党がどの党首の下で総選挙を戦うかが政局の焦点となる。小沢民主党代表も求心力に陰りが見えるが、昨夏の参院選大勝の実績は大きく、交代論は少ない。花道論浮上の福田首相は、ここへきて小沢民主党との決別を決め、対決姿勢に転じた。「闘う首相」への変身で支持率アップをもくろむ。再議決連発による滞留法案の成立促進、消費者庁新設や公務員制度改革などの改革派路線推進、ロシアや中国との首脳会談といった「福田外交」で突っ走るというシナリオだ。

 サミットへのこだわりは「なんとかサミットまで」という父親流の延命作戦ではなく、「サミットをてこに政権浮揚を」という政権維持戦略のようだが、不馴れな「闘う首相」路線が小手先の取り繕いだと、不本意ながら「花道」退場に追い込まれる可能性は大きい。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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