向谷実氏考案の「ホームドア」JR九州で実現へ 日本信号と共同開発!重量半減、16年度内に

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バー式ホームドアが閉じた状態。向谷さんが立っている部分が収納部で、バーがお互いの隙間に収納される構造だ(撮影:梅谷秀司)

「これなら十分に安全が確保されるのではないか」。扉の代わりにバーを使うという向谷さんのアイデアに、青柳社長も「それは面白い」と評価。

実際にJR九州に提案することになったが、運転シミュレーターでは鉄道各社向けの業務用などで高い実績を誇る音楽館も、ホームドアは全くの未経験分野。安全のための設備であることから実現へのハードルは高く、一時は「この件はいったん仕切り直しかな、と思った」(向谷さん)という。

しかし、向谷さんはそこで立ち止まらなかった。「造るだけ造ってしまえ!」と実際に動作する試作品を開発し、バー式ホームドアの特許も取得。試作品を昨年11月に千葉県の幕張メッセで開かれた「鉄道技術展」に出展し、大きな反響を呼んだ。

そして、その直前に公開された東洋経済オンラインの記事がきっかけとなり、音楽館にコンタクトを取ったのが日本信号・ステーション安全営業部の南順一部長だった。

軽いバー式「これはいける!」

日本信号の南順一さん。バー式ホームドアを見て「これはいける」と感じたという(筆者撮影)

日本信号製のホームドアは全国各地の鉄道で採用されており、同社はこの分野の大手。一般的な板状の扉によるホームドアのほか、ワイヤーを上下に昇降させることでドア位置の異なる車両に対応でき、重量も従来形より軽い昇降式のホームドアも開発している。

だが、鉄道会社からは従来と同じ一般的な横開き式のホームドアでも「もっと軽いものはできないのか」との声が以前からあったといい、「何かいいアイデアがないかと悩んでいた」(南さん)。軽量化に向けたさまざまな案を模索していたとき、目に入ったのが向谷さんのバー式ホームドアだった。「これはいけると思った」と南さんはいう。

向谷さんは、スタッフに「日本信号からバー式ホームドアに興味があると連絡が来た」と聞いたときは「『そんなところからいきなり話があるなんてウソだろ』と思った」と話す。だが、南さんからのメールを実際に確認した向谷さんは「責任ある立場の方から直接アプローチしてこられた」ことに驚き、同社と実現に向けた取り組みを進めることにした。

その後、日本信号の工場を訪れた向谷さんは「このような方式(バー式ホームドア)を思いついた皆さんに心から敬意を表します」と語る同社の設計者らの熱意に感銘を受け、改めて「我々もがんばろうと思った」という。

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