東京メトロ、好決算の陰で事故頻発の不安 ドア挟み、レール破断。中で何が起きている?

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総合研修訓練センター内を訓練運行する列車

東京地下鉄(東京メトロ)は好決算を謳歌する一方、最近は重大事故につながりかねないトラブルが頻発している。

まず業績から見てみると、5月11日に発表した2016年3月期決算は、売上高が前期比2.1%増の4082億円、営業利益は同4.3%増の1014億円と、いずれも過去最高を更新した。

好決算の理由は、旅客利用者の増加で運輸収入が順調に増えていることに尽きる。東京メトロは経済活動の活性化を収入増の主因に挙げ、そのほかにも副都心線の相互直通効果、豊洲エリアの再開発、うるう年効果、前年度の定期券先買い反動減の解消などを列挙した。

インバウンド利用の伸びも大きい。同社が推計した2016年3月期の訪日外国人の利用状況は1日平均5.3万人と前年度から1万人増加。旅客運輸収入は32億円で前年度から6億円増えた。

上野東京ラインはネガティブ要因

一方で、JR上野東京ラインの開業はマイナスに作用したようだ。「JRとメトロの乗り換えを上野ではなく新橋で行なう利用者が増え、銀座線の収入が4億円程度減った」と東京メトロの奥義光社長は説明する。

上野東京ラインの利用が増えるにつれ、影響額はさらに大きくなりそうだ。しかし、「都内の鉄道の利便性がよくなった。全体のネットワークをうまく活用していただければ、トータルで大きな影響にはならない」と奥社長は言う。

なお、主要駅で利用者が大きく減ったのは上野駅と、「コレド室町」オープンの反動減があった三越前駅の2駅のみ。「当社全駅のうち95%の駅で乗車人員が増えた」(奥社長)という。東京への集中が進むほど、東京メトロの利用者は増え続ける。売上高や利益もまだ伸びていきそうだ。

ただ、収益拡大に向けて課題はある。その一つが事業の多角化だ。大手私鉄各社は多角化により連結売上高に占める非鉄道事業の比率は7~8割にも達している。一方、東京メトロの同比率はわずか1割程度にすぎない。

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