ヤクルトで大活躍するフィリピン人ゲイ カトリック大国・フィリピンで変革の兆し

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きっかけは、日本が世界に誇るグローバル老舗企業、ヤクルトのフィリピン支局へ取材に行ったことだ。実はフィリピンでもヤクルトは知らない人はいない超有名企業。フィリピンの販促用ポスターを見ると、オシャレでポップなデザインだ。日本のシンプルなデザインと比べると「違う企業では?」と思うほどだ。

「デザイン、素敵ですね」と取材中に思ったことをそのまま口にしたことがキッカケとなり、このセンスの良いポスターをデザインしたのは、マーケティングプロモーション部の(たぶん)ゲイの人だと言う情報を手にいれた。

日本国内ではカミングアウトした社員がいたとしても、取材に応じてくれる機会は滅多にない。初となる(海外支局ではあるが)老舗日系企業で働く社員の話をちょっとでも聞くことができたのはラッキーだ。

取材の前に、デザイナーの上司に話を聞くと、「フィリピンではゲイは全く珍しくないので、会社で隠す必要はない。なので、みんな彼がゲイだっていうことは暗黙の了解で知っている。けど、あえて話題に出した事はないので直接彼にゲイかどうか聞いてみてください」と言われるほどラフだ

そんなゲイのデザイナーの名はジョイ・B・ジャクリナ氏(30)。フィリピンの大学でプロモーションデザインやグラフィックデザイン、コンピューターサイエンスを勉強後、いったんは銀行マンなったものの、大学で学んだデザインの仕事を諦めきれずに転職。2006年から念願の広告デザイン業務をヤクルトで行っている。

いつかは世界中のヤクルト広告を手がけたい

「日系企業だから、ゲイへの理解がないと感じたことはないし、聞かれれば笑顔で僕はゲイだよ!と答えるだけ。仕事は楽しいし、やりがいを感じている」とジョイ氏はキュートな笑顔で答える。

普段からゲイの友人達にはアーティストやデザイナーが多く、仕事でもプラスの影響を受けているという。

ジョイ氏は「いつかは、フィリピンのヤクルト広告だけでなく、世界中で僕のデザインした広告が採用されるのが夢」と日本国内の取材ではなかなか出会えない笑顔で話してくれた。

それでも、フィリピンではキリスト教徒がマジョリティを占め手いる点はネックとなっているという。実際、ジョイ氏も両親には自分がゲイだとまだカミングアウトしていない。

ついにフィリピンで初のLGBT法制度が可決

だが、今年10月、フィリピンではついにLGBTの人権法案が可決された。明るいニュースだ。LGBTのコミュニティに対する差別を全面的に禁止する法案はフィリピンでは初めてだという。

その法案によると、職場、教育、公共医療、公務(軍隊を含む)、コマーシャル、医療施設などでのLGBTの人々に対する差別が禁止され、また警察や軍隊からの差別も禁止される。一気に市民権を得ることになる。

ジョイ氏が親に話せる日もそう遠くないかもしれない。

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