フジ「4月改編不発」、抜け出せない蟻地獄 視聴率はTBSに抜かれ、背後に迫るのは・・・

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それでも状況は好転していない。30年以上続いた昼の長寿番組「ライオンのごきげんよう」と昼ドラマの枠を打ち切って拡大した「バイキング」や「直撃LIVE グッデイ!」は1ケタ台前半と、相変わらずの低視聴率が続く。深夜の報道番組「ユアタイム~あなたの時間~」も2%台と厳しい。早くもメインMCでモデルの市川紗椰の降板説まで浮上しているほどだ。

復権を目指すドラマも壊滅状態。「僕のヤバイ妻」(火曜22時)が平均8%を下回り、「OUR HOUSE」(日曜21時)も他局が強い時間帯ということもあり、5月8日放送の第4話は3.9%と4%を割り込む惨状。さらには福山雅治主演の「ラヴソング」(月曜21時)も1ケタ台にとどまる。このため、4月クールの視聴率はすべての時間帯でTBSに抜かれ、4位となっている。

フジテレビの日枝久会長は、持ち株会社フジ・メディア・ホールディングスの決算説明会で、番組制作費を効率的に投下すると説明し、「もう1~2改変でボトムから上がっていく兆候が出てくる」と語った。だが、記者の背後に座っていた金融関係者は「3年くらい同じことを聞いてるよ。ボトムはあるんだろうけど、どこまで下がるんだろう」とつぶやいていた。

他局関係者からも「フジは厳しい。成功体験から抜け出せていない。めちゃイケのように、お台場本社が番組に登場するとか、『自社が主役』の作り方で数字を取ってきたから、なかなかやめられないのだろう」といった声が聞かれる。

フジテレビ以外の子会社は好調

フジテレビの苦戦が続く一方、フジメディアHD全体に目を向けると、意外なほどの堅調ぶりだ。2015年度の売上高は前期比0.4%減の6405億円、営業益は同4.8%減の243億円にとどまっている。

新規連結となったグランビスタ ホテル&リゾートが訪日客需要を取り込み大きく貢献。再開発関連の配当金も計上し、都市開発事業は大幅増益となった。さらに、映像音楽事業ではCD、DVDなどパッケージ作品の点数を絞り込んだことで収益が改善。子会社における音楽著作権の売却もプラスだった。

カタログ、サイト、商品の刷新などが奏功し、セシールは大幅改善をみせた

通販のディノス・セシールを含む生活情報事業も、カタログやwebサイトを刷新し、高価格帯の商品を拡充したことなどで赤字から一気に復活を遂げている。フジテレビ以外の子会社群の営業益は188億円と、前期比40億円の大幅増益を記録し過去最高を更新した。それだけに、フジテレビの苦戦は際立つ。

ただし、ほかの子会社群に頼ってばかりもいられない。フジテレビ以外の子会社は一時的な増益要因が減るため、今期は減益となる見通し。フジテレビは今期、営業益100億円(2015年度は55億円)を必達目標としており、番組制作費をはじめとするコスト削減を進める。広告収入の増加が見込めない中、イベントなどの上積みも重要になりそうだ。

視聴率改善に時間を要するのは業界の常識だが、さすがにこれ以上の低下は許されない。このままでは、次回の10月改編でも大幅な刷新が実行されることになるだろう。亀山社長は就任3年目。最大の課題である視聴率について、2016年度は結果を厳しく問われそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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