そもそも採用内定とは、法律的にはどんな状態のことをいうのでしょうか?この点については最高裁昭和54年7月20日第二小法廷判決(大日本印刷事件)が有名です。この裁判では新卒の内定取消の適法性について争われましたが、最高裁は採用内定通知の時点ですでに労働契約が成立しており、一方的な内定取消は無効であると判示しました。
内定段階での労働契約は「始期付解約権留保付労働契約」です。新卒採用では卒業を条件に4月1日を始期として働き始めるのが一般的だからです。ただし、解約権が留保されているからといっても、企業の都合で勝手に内定取消ができるわけではありません。
重大事由がなければ内定取消はできない
最高裁は「採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である」としています。
つまり、卒業できない、健康状態の著しい悪化、虚偽申告、犯罪行為など内定当時予測できなかった重大な理由がなければ内定取消はできないということになります。
よく内定と内々定の違いを聞かれますが、もし紛争が生じた場合は単なる言葉の問題ではなく実態はどうなのかということが問われます。経団連の指針が正式な内定を10月1日以降としているため、実態は内定と変わらないけれども、便宜上それ以前の内定を内々定と呼んでいる場合も多いようです。また、たとえ労働契約締結準備段階での内々定取消の場合でも、信義則違反として損害賠償請求が認められる可能性もあります。
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