外資系金融は、もう終わりですか? キャリア相談 【Vol.1】

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一方で質問者の方は30歳ということで、日本において外資系金融機関がエスタブリッシュされてしまった後に入った方と言えます。その年齢ですと、アソシエイトかVP(ヴァイスプレジデント)くらいでしょうか?あなたが投資銀行部門(IBD)にいるのか?マーケット側(セールス&トレーディング)にいるのかでも事情が変わってきます。

転職市場においては、企業を顧客として資金調達やM&Aのアドバイスを行う、IBDの方がツブシは効きます。IBDであれば企業の財務分析や財務モデリング、資金調達やM&Aの実行には多少かかわっているからです。実はコンサルティング会社や事業法人でIBDにいて直接的に活きてくるスキルは、事業計画を策定する際のシナリオ構築力や、エクセルでの財務モデリングです。

投資銀行はBS、コンサルはPL

すでにディールチームのリーダとしてM&Aのエグゼキューションや交渉の経験があるとなお良いのですが、上のほうが詰まった今の投資銀行で30歳ではまだあまり経験がないかもしれません。おそらく一人でグリップできているお客さんもまだいないことでしょう。

日本でのコミットメントが高い一部の外資系金融機関を除いては、実務経験のあるVPレベルをクビにしすぎて、すごく偉い株屋のおじさん(マネージングディレクター)と、昨日まで学生だったようなジュニアメンバーで案件を行っている場合も多々見受けられます。顧客である事業法人からすれば、「大きな絵は持ってくるけど、実務担当者がころころ変わって、トランザクションが危なげ」と言いたくなるチームです。

よく間違えるところですが、投資銀行部門は主にB/S(バランスシート)について考える業務であり、戦略系コンサルティング会社はP/L(損益計算書)の営業利益より上の部分について考えるところなので、業務スキルそのものはあまり重複しません。そのため、30歳くらいでコンサルに入ると、コンサル的企業分析をもう一回やり直しになります。

事業法人は難しい

たとえば、コンサル的分析は財務よりもっと手前のバリューチェーンやサプライチェーンの分析などが入ってきます。ひたすら地味に営業人員の最適配置のモデルを組んでシミュレーションするといったこともコンサルのお仕事です。

おそらく世の中の人が思っているより投資銀行業務と戦略系コンサルの業務は異なります。何よりも異なるのが投資銀行はディール(M&Aや資金調達)を追う狩猟民族であるということです。これに比べるとコンサルは何らかのディールを起こすというより、経営の意思決定に資する分析を行い、提案をする業務なので、文化はかなり異なります。

IBDと事業法人ではもっと業務が異なります。たとえ経営企画部だとしてもルーティン業務があり、年がら年中ディールを追いかけているわけではないでしょう。投資銀行から事業法人に移ってもM&A専門部隊で働かないかぎりはヒマになってしまうのはよくあることです。

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