結婚もM&Aも、「新婚生活」を侮る者はしくじる 「Day1・入籍日」はゴールではなく中間地点だ
この期間では、Day1までに策定した「統合プラン」を実行しながらも、今後3~5年の中期経営計画を両社で喧々諤々議論しながら策定していく。そのため、この期間でやるべきことが出来ないと、これから始まる長い統合生活も微妙な結果にならざるを得ない。
これは結婚生活でも同じことが言えるようだ。アメリカのテキサス大学の心理学者Lisa Neffによれば、結婚から半年内に喧嘩をしていた夫婦ほど離婚率は低く、半年内で喧嘩をあまりしなかった夫婦ほど離婚率が高かったという。期間こそ100日間と半年間で異なるが、本質は同じはずだ。初期段階で決めておくべきことを決めること、そして、そのためには多少の衝突はあれども対話をしっかりすることが大事なのだろう。
読者の中には、「統合前にデューデリジェンスでしっかりと見極めたのだから、統合後に衝突することなんてあるのか」と疑問に感じる人もいるかもしれない。ごもっともである気もするが、しかし、統合前には気づかなかったこと、分からなかったことはいくらでも出てくる。
「海外の相手」との新婚生活はもっと大変!
これも結婚で置き換えると分かりやすい。育ってきた環境の違う2人が、結婚して初めて同じ屋根の下で生活するのだ。部屋の片づけ方から、おカネの使い方、料理の味付けまで、自分がこれまで常識だと思っていたことが、相手にとっては非常識である場合はざらにあるだろう。いくら結婚前にお付き合い期間があっても、付き合っているときと結婚した後では、見えるものが違う。結婚して初めて気づくことも多いはずだ。
それと同様に、統合前にデューデリジェンスをしたとは言え、デューデリジェンスは期間も限られている上に、対象企業だって法律に反さない限り、自ら言う必要のないことは明かさない。デューデリジェンスで対象企業のすべてが分かるわけではないのだ。だからこそ、この100日間での統合作業が最も重要となる。
これは、対象企業が海外の企業だと、なおさら大変だ。文化的ギャップが大きくなり、国内企業同士なら話せば分かるようなことも、相手が海外企業ならいくら話し合っても分からない場合がある。
厚生労働省によれば、年間の国際結婚の件数はおよそ2万組らしいが、離婚件数はその7割以上を占め、日本人同士の離婚率の倍に近いそうだ。クロスボーダーM&Aの難易度と照らすと、非常に納得のいく話だと感じる(クロスボーダーM&Aに関しては、特有の論点が多いため、詳細は別の機会に述べたい)。
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