ビル・ゲイツが次の大統領に望む唯一のこと 米国の成長は技術革新に委ねられている

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私自身は研究開発がもたらすインパクトに直接携わることができた。コンピュータが普及し始めた1960年代に学生だったのは、非常にラッキーだった。初期のコンピュータは非常に高価で簡単に手が届く代物ではなかった。しかし、米政府による研究開発がもたらしたマイクロチップ革命により、状況は完全に変わった。私が設立に携わったマイクロソフトは、そのおかげで、コンピュータの生産性を向上させるソフトウエアを開発できたのだ。

その後、米国の研究開発の別の産物であるインターネットが、状況を再び一変させた。テクノロジーのトップ企業の大半が現在も米国に本社を置いているのは偶然によるものではない。そして、こうした企業の躍進は、人間の活動に多大な影響を及ぼすだろう。

個人的にまず有望だと考えているの医療分野だ。この分野への米国の投資は大学やバイオ企業、政府の研究機関で高給の雇用を創出するとともに、がんなどの新たな治療法開発につながっている。エボラ熱やジカ熱のような、死をもたらす伝染病を食い止める助けにもなっている。

そして貧しい国々で生命を救い、5歳未満の死亡率は1990年の半分以下に低下した。これは歴史上最も偉大な統計だと思う。そしてそれを後押しした米国は、多大な称賛に値する。

ポリオ根絶という大きな成果

今後数年間には、急性灰白髄炎(ポリオ)根絶という、さらなる進展も期待できる。米国の科学者がワクチンを開発したため、この目標は見えてきているのだ。ポリオは1979年に撲滅された天然痘に続く2番目の根絶の例になるだろう。米国は天然痘根絶でも、かけがえのない役割を果たした。

マラリアでもエキサイティングな進展が見られている。米国が薬や蚊帳(かや)などの開発を進めたこともあって、死者の数は2000年から2012年にかけて、40%あまり減少した。こうした機会を最大限に活用するために、われわれは基礎的な医療や、ワクチンのような特定分野への投資をさらに行う必要がある。

もう一つの偉大な例としてはエネルギー分野がある。

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