東電系データセンター買収するセコムの狙い

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東電系データセンター買収するセコムの狙い

セコムは9月27日、東京電力傘下のデータセンター事業会社、アット東京の株式過半超を取得、子会社化すると発表した。アット東京はデータセンターでは国内最大手級の規模を誇る。セコムはこの買収により、セキュリティ、防災、医療などに並ぶ新たな事業の柱を獲得したことになる。

アット東京には現在、東京電力が84.2%、ITホールディングス傘下のインテックが15.8%出資しているが、セコムは東京電力の持ち分から50.882%を買収し、連結子会社化する。買収金額は333億円。東京電力、インテックとも資本関係は維持する予定だ。
 
 アット東京保有のデータセンターの総床面積は23万平方メートルで国内最大規模。セコムは現在、自前の子会社セコムトラストシステムズを通じてセキュリティ機能を付加したデータセンター事業を展開しているが、規模的には総床面積2万平方メートルと、業界内では中堅規模に位置する。

東日本大震災を契機にしたBCP(事業継続計画)への関心の高まりなどもあり、高品質のデータセンターへの需要は伸びており、同事業はグループ内でも成長領域という位置づけで、13年10月には7000平方メートルのデータセンターの増設も予定しているが、まさに「時間を買う」(同社)買収で一気に事業規模拡大が可能となった。

アット東京の業績は、売上高262億円、営業利益55億円、純益30億円(前2012年3月期)。過去3年間でみても55億円前後の営業益を稼ぎ出している。データセンターは顧客企業のコンピュータの保守・管理・運営などを集中的に行うストック型ビジネスであり、安定的な電力供給は事業の基本的要素の1つである。

電力会社にとっては大量の電力を消費してくれる事業でもあり、本業への貢献も大きい。東電側からみればいわば”虎の子”的な事業だが、同社は原子力損害賠償支援機構と共同で策定した「総合特別事業計画」に沿って保有資産の売却を進めており、アット東京もその対象となった。

株式譲渡予定日は10月31日。セコムの業績への影響という点では、今13年3月期の業績にも5カ月分連結される。買収資金の調達方法は明らかにしていないが、同社の12年3月期末の現金・現金同等物残高は2053億円と手元資金は潤沢で、今回の買収金額は自己資金で十分対応できる水準。のれん金額などは未定だが、売り上げ、利益ともにプラス要因となることは間違いない。

(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)

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