ベンツが「整備士養成コース」で目指すこと 輸入車販売トップが始めた即戦力の育成

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15年間輸入車ブランドの首位を走り続けたフォルクスワーゲンを抜き、2015年に国内の輸入車販売台数で首位に躍り出たMBJ。ここにきて整備士育成に力を入れる背景には、販売の順調さと裏腹に募る危機感がある。

東京工科自動車大学校の入学式。今年から「ベンツコース」が開講する

販売台数や保有台数が増えるにつれて、低下しがちなのが顧客満足度だ。従来から輸入車は、国産車と比べてアフターメンテナンスに不便があるとイメージされがちだった。200店以上の販売店網に1500人のメカニックを抱えるMBJも例外ではない。年頭会見で「今年はベストカスタマーエクスペリエンス元年」と宣言したMBJの上野金太郎社長は「年間6万台の販売目標達成に顧客満足度の向上が伴わなければ意味がない」と危機感を表した。

高齢化や若者の車離れで全国的に整備士が不足している中で、国産車メーカーと異なり自社で整備士学校を持たない輸入車はさらに不利だ。加えて最近の自動車は、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車といったパワートレインも多様化している。

整備士に求められる技術はますます高度に

自動ブレーキなどの新機能の搭載も進んでいることからも、整備士に求められる技術は日増しに複雑になっている。自動車の進化のスピードが速くなるにつれて「整備士資格取得のための授業内容と実際の現場での整備作業との間に乖離が生じる」(中山氏)という問題も生まれている。

東京工科自動車大学校との業務提携はこれらの課題に対処するための大きな一歩だ。メルセデス・ベンツコースは1学年25人。この25人が整備士としてベンツの販売店網で働き始めたところで、短期的なインパクトは大きくないかもしれない。

が、専用コースができればベンツの販売店網に就職する新人整備士が安定して毎年25人確保できる。「この1年で何かが変わるということではなくても、中長期的にみればメルセデス・ベンツのブランドを下支えする」(中山氏)。輸入車販売トップの座を確固たるものにするためにベンツは着々と布石を打っている。

宮本 夏実 東洋経済 記者

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みやもと なつみ / Natsumi Miyamoto

自動車メーカー、部品会社を担当

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