米国の新大統領を待ち構える頭痛の数々 誰が当選しても中東や北朝鮮、中国が相手だ

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次はトルコだ。中東の重要な要素であるこの国は長期にわたって、経済危機や相次ぐ軍事クーデターなどに苦しんできた。ただ、欧州連合(EU)加盟を目指していることもあってか、西側にとっては常に信頼できるパートナーかつ同盟国とみなされてきた。

しかし、中東問題に対する同国の取り組みは秘密裏に行われ、一貫性を欠いている。シリアに関しては一時、アサド政権と親密なアラウィ派(シーア派の一部)を支持しているかに思われたが、その後、反アサドの破壊活動を行っているスンニ派の一部にくら替えした。トルコのエルドアン大統領はその間、暴力による抑圧を通じて、少数民族クルド人の問題を再燃させてしまった。

これ以降トルコの政局は悪化し、国内の根深い分裂には改善の兆候が見られない。現在のシリア危機の解決策の1つが、難民の主要な逃避先であるトルコを支援することであるのは間違いない。ただし、トルコが自覚すべき統治の欠陥は根深い。過去と同じように、今回の苦境も切り抜けられるかは分からない。

大統領にミスは許されない

これ以外に、危機の程度や本質が従来から変わってきている例として、北朝鮮の問題がある。現在の指導者の金正恩は、父の金正日や祖父の金日成よりもずっと危険に感じられる。近隣諸国に戦争を仕掛けようとする姿勢は金正恩に始まったことではなく、1950年に朝鮮戦争を起こしたのは祖父の金日成だ。しかし、金正恩の無謀さが核兵器開発とあいまって、北朝鮮問題は米国の新大統領が最優先すべき交渉課題となるかもしれない。

最後が中国だ。米国人の多くにとって中国のリスクは、その強さに起因している。しかし、関心を集める真の理由は、中国の実体経済に依存する他の多くの国々を危機に至らしめる発端になりかねないという弱さにある。

現在の大統領選の勝者は、以上のような課題に取り組むよう求められる。率直に言って、解決を望むのは途方もなく非現実的となってしまう場合もあるだろう。しかし、それでも、ミスが許される余地はほとんどない。

クリストファー・ヒル 米デンバー大学コーベル国際大学院長

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Christopher R. Hill

米国の元東アジア担当国務次官補。近著に『Outpost』。

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