職場の「ミスマッチ人材」は、こうして決まる サイバーが掲げる実力主義型終身雇用とは何か

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ただ、ミスマッチ制度を恐れている社員なんて、ほとんどいないですよ。「ミスマッチ制度なんて、まだやっているんですか?」と言われるくらい。それくらいがちょうどいいバランスだと思うんですよね。で、やっているのかと言われれば、それは確かにやっている。

ミスマッチ制度の運用で、ひとつ覚悟を持っているのが、その人の人生を絶対によくすること。役員会でミスマッチ認定された人には、私か人事部長レベルの人間が直接対話するようにしています。人間は感情の動物。残ってもらうにしても、離れてもらうにしても、誠実かつ真剣勝負で向き合っていくというのは、重要だと思っています。

――サイバーエージェントでは、取締役も一定期間で交代していく。

2年に1回、8人中2人が変わります。取締役というポジションが社内キャリアでの「上がり」ではない、ということを明確にしている。役員の構成というものは、2年間どういうチームで戦うかという、サッカーのスタメンのようなものです。経営陣こそが、変化の模範でなければ、現場だって白けてしまう。

ただ、役員は成果だけ、数字だけで見られればいいのは当然。会社の価値観に一致しているということはあまりにも当たり前なので、現場の若手社員とは立場が全然違う。わが社では、価値観が合っている人がまず残って、そこで結果を出せる人が上に行くということです。

――今は社員の平均年齢も若いからいいですが、将来にわたっても価値観が一致する人全員の雇用を守るということは、ハードルが高くないでしょうか。

確かに、ロジックとして考えるとできない可能性の方が大きいかもしれません。しかし、われわれは経営判断としてやると決めた。あとは、それをやるためにどこまで頑張れるかしか考えない。

イノベーションをやるときは、否定する材料はいくらでも出てくる。スマートフォンだってそうでしょう。「指で操作するなんて、指紋がつくから無理だ」なんて言われていましたよね。

われわれの「実力主義型終身雇用」も、失敗して実現できなかったら、「やっぱり無理だった」と笑ってくれればいい。もしうまくいけば、結果としてサイバーエージェントの人事制度が「21世紀を代表する」ものになるでしょう。できないと思われていたことをできるようにするのが、イノベーターでありクリエーター。

会社の成長と、社員の幸福を両立させる

私は、どんなことであっても、夢を語ることがバカにされない社会になることが大切だと思います。20代の社員から見て、「自分も早く40代になりたい」と思うような、そういう社会にしたい。

――将来的には、「実力主義型終身雇用」が、多くの会社のロールモデルになっているかもしれませんね。

ネット企業の多くが、サイバーエージェントの人事制度にいろいろな意味で注目してくれています。しかし、われわれのマネをすることはできないし、する必要はまったくありません。なぜなら、中にいる人も、会社のビジョンも、身を置く産業の構造も違うから。それぞれの会社にフィットしたものでなければ、制度だけ導入したとしても意味はありません。

会社の業績がよくても社員が不幸で、「ブラック企業」になっているようでは嫌だし、社員がハッピーでも会社にキャッシュがなければ何もできなくなってしまう。中長期的に会社が伸びていて、社員がハッピーであり続けること。このバランスをとって、両輪が回っているのが、いちばんいい会社だと思います。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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