LINE、新規参入と撤退が交差する「勝負所」 ゲーム、広告、スタンプの次をどう育てる?

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では、プラットフォーム化の戦略は、現状でどれほどの成果を出しているのか。

足元の売上高構成比を見ると、2015年10~12月期の売上高326億円のうち、ゲームが最大で全体の37%。広告が33%、スタンプが23%と続き、これら3事業で9割超を占めている。LINEペイなどを含むその他事業の比率は、着実に高まっているが、それでも7%にすぎない。

調査会社の米アップアニーは2016年1月、世界のスマホアプリを対象にした2015年の売上高ランキングを発表。LINEはゲームアプリで7位につけ、ゲーム以外のアプリ売上高は3年連続のトップだったが、手広く展開する事業の収益化は、まだ緒に就いたばかりの段階といえよう。

再び成長を加速するための、重要な場面に

一方、新たなサービスを打ち出しながら、2013年末に開始したフリマアプリ「LINEモール」の撤退を2月に決めるなど、見切りをつけた事業もある。フリマアプリは創業3年の「メルカリ」が急成長していることに加え、EC大手のスタートトゥデイも参入、競争が激化している。

LINEを率いる出澤社長。サービスの取捨選択は続きそうだ

出澤社長は「3カ月ごとに経営指標を見て判断している」と説明する。100以上の事業を手掛ける中で、今後も取捨選択は続きそうだ。

競合サービスを見ると、米フェイスブックの「メッセンジャー」は、2015年6月に7億人だった月間アクティブユーザーが今年1月に8億人まで増加している。LINEも、2015年12月に世界のユーザー数が2億1500万人となり、9月時点から300万人増加したが、拡大スピードでは差をつけられている。

LINEはトップシェアを握る日本、タイ、台湾に加えて、注力するインドネシアを加えた4カ国・地域に、全体の7割近いユーザーが集中している。新規獲得が壁にぶつかる中、既存ユーザーからの収益を拡大する重要性は、確実に高まっているのだ。

プラットフォーム戦略を早く軌道に乗せ、海外でも横展開できるか。中長期的な成長を占ううえで、LINEは重要な局面を迎えている。

「週刊東洋経済」2016年4月9日号<4日発売>「核心リポート02」を転載)

(撮影:梅谷秀司)

 

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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