インドネシアの官民一体発電所に灯る黄信号 土地収用に対し抗議運動が起きている

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この間、建設反対派住民に対して逮捕や脅迫行為、灌漑(かんがい)用水の遮断など、さまざまな妨害が行われているとして住民から指摘されてきた。

インドネシアの国家人権委員会は、住民の訴えを重く見たうえで人権状況の改善を要求している。これまでに、事業主体であるBPI社、用地買収に関与してきたインドネシア国有電力会社、中部ジャワ州知事やジョコ大統領に、人権擁護を求める勧告や要請を繰り返し行ってきた。

日本でも4度にわたって衆参両院で野党議員から進め方に問題があるとの指摘がされてきた。

インドネシアの人権委員会も、2015年12月21日付で安倍晋三首相および大島理森衆議院議長宛てに、「住民への脅迫など土地買収手続きに関してのさまざまな人権侵害が見られる」との書簡を送付。「日本の関与を慎重にレビューするよう、配慮願いたい」と要望している。

「法にのっとって土地取得を進めている」

こうした状況を、BPI社の筆頭株主であるJパワーは「法にのっとって土地取得を進めており、人権侵害はなかったと考えている。社会貢献活動や住民への支援にも取り組んでいる」(国際業務部)と説明する。

同様に、大株主の伊藤忠商事も「これまでにも国家人権委員会による勧告を十分に尊重しながら事業を進めてきた。住民説明会や代替地紹介など、さまざまなプログラムを実施してきた」と強調する。

つなぎ融資に応じてきた大手銀行は、各行とも「個別案件についてはお答えできない」としているものの、「一般論として人権に関するガイドラインについては、『赤道原則』(大規模なプロジェクトファイナンスにおける環境・社会への国際的な配慮基準)に基づき、環境や人権などに配慮して融資している」(三井住友銀行)という。

だが、インドネシアの国家人権委員会は、2015年9月3日付のジョコ大統領宛て要請文で、「住民は計画について、明確で透明性があり、包括的な情報を得ていない」「住民は最初から参加する機会を与えられておらず、願いや意見は完全には反映されていない」と述べている。

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