デキない人を狙う自己啓発セミナーの正体

それは米国の学者が編み出した「発明」だった

自己啓発セミナーにハマッてしまう人は多い(撮影:尾形文繁)

金儲けとしての自己啓発ビジネス

自己を高めていく行為は、そもそも批判されるべきではない。仕事のスキルを高めて、ビジネスパーソンとして価値を上げていくのは望ましい。

私はサプライチェーン、調達物流といった、専門的でニッチな領域を主としたコンサルティングに従業している。拙著『「これ調べといて」に困らない情報収集術』(ディスカバー・トゥエンティワン)でその手法の一部を解説しているが、専門講座やコンサルティングの現場では、もちろんデータや細かな計算を元にする。知識や経験をつけるほど仕事がうまく回るのは間違いなく、それを特に若い受講者には伝える。

ただ、市場調査や支出分析などは多くの時間を要する作業だ。クライアントも大人だから、数値が間違っていても怒りはしない。次の仕事がこなくなるだけだ。

一方、コンサルティングや講師をやっていると、同業者から真意とも皮肉ともわからない”助言”をもらう。「そうやって時間をかけて最新の情報を調べたり、資料をつくったりするのは無駄だ」という話だ。それよりも、「自己啓発ビジネスが儲かる」という。

「なんですかそれ?」と訊いた私に助言者は教えてくれた。「ほら、『あなたは夢を実現できる』って教えてあげるやつだよ」「気持ちを高めるやつですね」「そうそう、生活習慣とかマインドセットとかを数十万円で教えてあげる」「そんなに儲かるんですか」

残念か運良くか、私はいまだに細かな資料を作成し、日々の情報収集を欠かせない側にいるものの、この自己啓発ビジネスには別の意味で興味をいだいてきた。コンサルタントとして、なぜこのようなビジネスに人々が金を払うのか、という点だ。データや商品ではなく、変化した受講者、という人間そのものがサービスになっている特殊性。なぜ似たような自己啓発ビジネスが誕生しては消え、そして現れていくのか。

そして重要なのは、個人的な怨嗟と羨望だ。多くのひとは対象を批判するとき、うらやましく感じている場合が多々ある。私の場合も、自己啓発ビジネスがたやすく大金を生み出すその錬金術に嫉妬してきた。そう正直に告白せねばならない。この前段を長々と書いたのは、このテーマが私の業からであるとお知りいただきたかったからである。

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