オリエンタルランドの秘密 「最強のサービス企業」はこうして創られる 

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開業から10年過ぎTDSが「変身」

舞浜への「再評価」を促したのは、TDSの集客力向上だ。

開業当初、同パークの使命は「TDLとのカニバリゼーション(入園者の奪い合い)の回避」。TDLはファミリー向けの色合いが濃いのに対し、TDSについては「大人のパーク」を志向した。TDLは周囲から隔離された世界。パーク内から外部の景観が見えないよう工夫を凝らしたが、「海」がテーマのTDSは東京湾の景色をそのまま「夢と魔法の王国」のワンシーンに取り込んだ。TDLと異なり起伏する箇所も多い。落ち着いた雰囲気のレストランが目立ち、酒を飲むこともできる。

ディズニーキャラクターの露出も、開業当初は抑えぎみだった。TDLではミッキーマウスやグーフィーなどが入園者を迎えて記念撮影などに応じていたのと対照的。TDSの「アンコール!」と呼ばれるショーには、ディズニーキャラクターがいっさい登場しなかった。

05年にはTDS開業後では初となる新規アトラクション「レイジングスピリッツ」、翌06年「タワー・オブ・テラー」と、スリルを伴う若者向けのアトラクションを相次いで投入。「TDLよりも40歳以上の入園者比率が上昇した」(佐藤哲郎テーマパーク統括部長)。カニバリゼーション回避は一定の成果を上げた。

ただ、「開業から5年ぐらいは差別化にこだわりすぎて、ややもたついた」(砂山起一副社長)のも事実。TDSのオープンから3カ月後の01年12月、オリエンタルランドの幹部は揺れる胸の内を明かしていた。「ディズニーキャラクターの最低限の露出は必要だ。入園者はミッキーマウスを期待している。それでもTDSはTDLと違う……」。

TDSの戦略に変化が見え始めたのは、00年代後半以降だ。「アンコール!」に代わり、ミッキーマウスが主役を務めるショー、「ビックバンドビート」がスタート。ディズニーキャラクターと触れ合うことのできる「グリーティング施設」も増やした。その結果、ファミリー客を中心に、TDS入園者の裾野は広がっていった。

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