ショーンK「熱烈擁護意見」がはらむ危険性 詐称は相互信頼で成り立つ仕組みを破壊する

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かたや経歴を詐称した川上氏個人に対する社会的罰について”行き過ぎ”であるという意見で、かたや”経歴詐称”という行為そのものが、所属する社会に対する裏切りであると指摘しているに過ぎない。違いがあるとすれば、"自分自身を大きく見せるための詐称”に対する許容範囲の違いだろう。

社会罰として行き過ぎであるという意見の方の中には「直接の被害もないのに”叩き”を続ける人たちにこそ嫌悪感を覚える」との表現もあった。確かに中には川上氏個人の否定を繰り返すネット上の意見も見受けられるが、川上氏の詐称を強く非難するひとたちの矛先は、彼個人よりも彼の行為がもたらす結果に向いている。

認めれば、相互信頼で成り立つ社会が崩れてしまう

”自分が何者であるか”を正しく紹介することは、円滑なビジネスを行う上でも、友人関係を深める最初の一歩とする上でも、とても重要なことだ。相手がどんなことに興味を持ち、どんなスキルを有していて、どのような考えで行動しているのか。名刺ひとつとっても、情報がゼロの段階から相手を理解する上ではは大きな意味がある。

もちろん、茂木氏がブログに書いたように、経歴が詐称だったからといって、過去に為された仕事の価値、あるいは友人関係の中で培った想い出が変化するわけではない。実際の仕事などで出した結果は、詐称の事実にかかわらず本人の能力である。

しかし、たとえ良い結果が出たとしても、そこに至る経緯における経歴詐称を認めてしまえば、相互信頼によって成り立つ社会的な仕組みは壊れる。

これに対しても、”いやいや、そんな大層なことじゃないだろう”という意見もあるだろう。

仕事のパートナーを選ぶ上で、あるいは友人を選ぶ上で、相手の経歴を気にすることはほとんどない。したがって実害はなく、大きな問題ではないという意見だ。しかし、こうした意見を言う方の多くが、自らが誰かを示す何らかの後ろ盾をもっているように思う。

一流企業につとめていれば、そこに採用されるだけの努力をしたのだろうと考えられるし、役職を得ていれば経験あるいは能力が買われていることが想像される。あくまで想像されるだけだが、円滑に人間関係を発展させる上では貴重な情報だ。

次ページビジネスでは相手の経歴を知ることはきわめて重要
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