ショーンK「熱烈擁護意見」がはらむ危険性 詐称は相互信頼で成り立つ仕組みを破壊する

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こうした”詐称”あるいはそれに近い行為は、残念なこと個人の経歴や実績だけにとどまらない。筆者は電機製品やデジタル製品の評価、業界レポートを執筆する機会が多いが、とりわけブログやSNSを経由したバイラルマーケティングにおいて、詐称とは言えないまでも、バズを作るために意図的にミスリードさせるようなPR手法を採用しているのでは、と疑わしいケースもある。

また、クラウドファンディングなどに代表される、細かなデューデリジェンスを行えない個人から資金調達する手法が定着してくると、物理的・技術的な困難を過小に見せかけるビデオや資料を作る手法が用いられることもある。

物理的な配線や通信手段、バッテリー持続時間や連携するデバイス(多くはスマートフォン)の特性や制約を大きく逸脱した製品企画に対して、専門家ならば誰も手を出さないようなプロジェクトでも、見せ方次第で資金を集めてしまうこともある。

批判をするほうが責められてしまう

とりわけクラウドファンディングは、将来の可能性に対する投資となるため、その時点で実現性が低い、物理的に無理があるといったことを指摘しても、よほど詳細に掘り下げなければ、”嫉妬心から攻撃しようとしている”としか見られないケースもある。結局、よほどのことがない限り、批判の声はかき消される。

困難に遭いながら苦心して完成するものもあれば、本来の機能を実現出来ず未完成のまま出荷せざるを得なかったもの、あるいは資金枯渇でプロジェクト終了したものなど、大多数のプロジェクトは(成否はともかく)活動実態が存在しているものばかりだ。

しかし、そもそも活動実態があったかどうか疑わしい、あるいは最初から見込みがほとんどないのにお金だけを集めるケースもある。昨年9月には米ワシントン州で、約束の製品開発を行った形跡がみられなかった企業に対し、クラウドファンディング出資者への返金を求める判決が出された。

クラウドファンディングは、新たな商品やサービス、店舗などの立ち上げを夢見る若い起業家にとっても、未来の夢を共有しながら未来を創ることを手伝いたいと考える人たちにとって有益な仕組みだが、当然ながら真剣に目標に向かって取り組むという信頼関係がなければ成立し得ない。

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