「天草エアライン」が、たった1機で起こす旋風

理想的な中小企業の姿がここにある

2000年就航以来の大きな節目を迎えた天草エアライン

天草――。東シナ海、有明海、八代海という3つの海に囲まれた熊本県の南西部に位置する島々だ。歴史に残る「島原の乱」の天草四郎が頭に思い浮かぶ人もいるだろう。九州本土とは天草五橋と呼ばれる5つの橋で結ばれ、季節を問わずイルカを観察でき、南蛮文化やキリシタンの歴史を伝える施設などがある。日本最大級となる肉食恐竜の化石が発見された恐竜の島でもあり、観光地としても知られる。

ライフラインから旅の目的に

そんな天草にある地方空港を拠点とする地域航空会社がひそかな旋風を巻き起こしている。社員は57人、飛行機はたったの1機。その名も「天草エアライン」だ。現在、福岡-天草(1日3往復)、熊本-天草(1日1往復)、熊本-大阪・伊丹(1日1往復)の3路線を運航している。

拙著『天草エアラインの奇跡。赤字企業を5年連続の黒字にさせた変革力!』(集英社)でも詳しく解説しているが、地方自治体と民間企業の共同出資による第3セクター方式の小さな会社が、今や天草の地域活性に欠かせない存在となっている。

天草エアラインの2014年度搭乗者数は7万7056人と2010年度と比べ23%増えた。2015年度以降もさらに増加傾向にあり、その多くが観光客だ。地域の人のライフラインとしての移動手段だけではなく、「みぞか号」(みぞかとは天草弁でかわいいという意味)と名付けられた親子イルカをあしらった可愛らしい機体に乗ることを旅の目的とする観光客も少なくない。

その天草エアラインが2000年の就航以来の大きな節目を迎えた。今年2月、フランスATR社が製造する48人乗りの「ATR42-600型機」を新型機として導入。これまで使い続けてきたボンバルディアのDASH8-100型機(39人乗り)と入れ替えた格好だ。DASH8-100型機は経年劣化で整備コストが高くなっていたうえ、同型機はすでに製造が打ち切られ整備部品の調達も困難になってきていた。

一方、新型機導入といっても、天草エアライン自体に飛行機を購入する体力はなかった。後継機種に選定したATR42-600型機の導入費用は1機あたり約23億円。天草エアラインには熊本県、天草市、上天草市、苓北町などの自治体が中心に出資しており、ここからの支援を得なければならなかった。

ポイントになったのは、前天草市長の安田公寛氏による各方面への働きかけだった。その後、2014年に中村五木・現天草市長が、天草エアラインの新機体を地元自治体で購入することを正式に発表し、今年2月の運航開始にこぎつけた。

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