優秀なリーダーは部下の前で「無能」を演じる 「意図的手抜き」で部下を育てよ

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であれば、もう一歩進んで、自分ができることでも苦手なふりをし、そこでは部下に助けてもらうという方法が考えられます。「無能ぶる技術」「意図的手抜きの技術」です。どこかで「さすが」と思われていれば、その上司を助けることは部下の栄誉。「ありがとう」のひとことで職場が活気づきます。

出番を独占する上司ほど厄介なものはない

宇貝の悩み③:短所だらけだけれど、これでいい?!

宇貝:先輩と話をしていると、なんだか自信が出てきました。私でもやれそうです。

中嶋:そうだよ。私なんか文字は汚い、すべてに消極的、優柔不断、創造性ゼロ。部下に指示されて動いていたようなもんだよ。君ならもっとできるよ。

宇貝:先輩は短所ばっかりですもんね(笑)。すっきりしてきました。明日からまた頑張ります。

中嶋:きっと上手くいくよ。君も部下の出番をたくさん作ることができる人だから。

宇貝:う~ん。誉められた気はしませんが……。

解説Ⅲ 出番と居場所

私たちは自分の居場所を確保できると、スポットライトの当たる出番が欲しくなります。上司や同僚に声を掛けられれば、居場所が確保でき、仕事に関心を持ってもらえば出番が来たと思えます。居場所の確保に汲々としているときは受け身になり、しっかりとした居場所があれば、能動的になります。安心とストレスのほどよいバランスが、創造性と挑戦意欲を刺激します。

いっけん優秀な管理者が、必ずしも優れた職場運営ができない原因は、自分が出番を独占し、部下の出番を作らないことにもあるようです。

中嶋 哲夫 人事教育コンサルタント、MBO実践支援センター代表

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なかしま てつお / Nakashima Tetsuo

1948年生まれ。京都大学経済学部卒業。20年間の企業生活(鐘淵化学工業、現・カネカ)において、企業内ベンチャー、営業、人事の業務を体験。人事部門では、社員教育と人事企画を担当し、目標管理制度の運用に従事。仕事を通じて学ぶ目標管理に共鳴し、その考え方と実践ノウハウを現場管理者とともに開発。1991年に退社し、人事教育コンサルタント。産労総合研究所MBO実践研究所顧問を務めた後、MBO実践支援センターを設立。代表として良い職場づくりを目指す人事担当者と管理者を指導する。数多くの企業において、目標管理を活かした職場づくりを指導している。この間、大阪大学大学院国際公共政策研究科に進み、人事評価データや賃金データの統計解析を研究。2007年に博士(国際公共政策)。現在、大手前大学、大阪商業大学大学院にて非常勤講師を務める。著書に、『岐路に立ったら読む ライフマネジメント』(共著、中央経済社)、『目標管理ハンドブック』(共著、経営書院)、『人事の経済分析』『人事の統計分析』(ともに共編著、ミネルヴァ書房)など。

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