民主党は豹変に躊躇するなかれ、問題が多いいくつかの政策公約

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 農家の戸別所得補償制度にも問題は多い。同党のマニフェストによれば、「農畜産物の販売価格と生産費の差額を基本とする『戸別所得補償制度』を販売農家に実施する」とあるが、農業経営を拡大しようとする意欲のある農家と意欲のない農家を一律に扱う意味はあるのか。

筆者が週刊東洋経済6月13日号で主張したように、農業政策の基本は、従来の零細農家をも含めた全農家の温存から、経営規模の拡大を図る意欲的な大規模経営農家の選別的な育成と、それによる食糧自給率の回復へと転換すべきだ。

日本のコメ農業を緩慢な衰退へジワジワと導いている減反制度も廃止すべきである。減反を廃止すればコメの市場価格は下落するから、そのときにこそ、大規模米作農家が打撃を受けないよう欧米型の直接支払いの所得補償を行うべきである。

ここでも、民主党の補助金政策にはメリハリがなく、財政的に見て効率の悪いことが露呈している。

高速道路の無料化も大問題だ。これに必要な財源は1兆3000億円(民主党マニフェスト)に上る。従来は、この金額を高速道路を利用している受益者が負担していた。無料化を実施すれば、この負担が税金として国民全体に広くかかってくることになる。自動車を運転しない人、高速道路を利用しない人も高速道路の負担を担うことになる。これも「負担のバラマキ」にほかならない。

だが、問題はそれだけではない。

まず渋滞である。すでに休日料金1000円化が渋滞を生んでいる。無料化されれば、トラック輸送に与える影響は相当深刻化するだろう。

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