鳩山新政権、政策裏付ける財源提示がカギ--日本の財政赤字拡大の可能性も《スタンダード&プアーズの業界展望》

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シンガポール
主席アナリスト 小川隆平

鳩山内閣が9月16日正式に発足した。スタンダード&プアーズは、16年ぶりの非自民党勢力による今回の政権交代が、短期的に日本のソブリン格付け(AA/安定的/A-1+)にプラスまたはマイナス影響を及ぼす可能性は低いとみている。ただし、新政権が予算のより効率的な配分を実施できない場合、将来的に国の予算を上回る財政赤字額の発生や財政赤字幅自体の拡大につながる可能性があると考える。

民主党は8月30日の総選挙で、1955年の結党以来、政権を維持してきた自民党からの政権交代を実現させた。それにより、衆議院で自民党が過半数議席を持つ一方、参議院では野党が過半数議席を持つ、という「ねじれ国会」が解消した。しかし民主党は衆議院で定数480議席のうち308議席の単独過半数の議席を確保した一方で、参議院の議席は、単独過半数に達していないため、社民党や国民新党との連立で、新政権をスタートさせた。

すでに、新閣僚が就任会見で、総選挙で掲げたマニフェスト(政権公約)に沿った政策を相次いで表明しているように、鳩山政権は多くの政策変更を打ち出すものとみられる。日本のソブリン格付けの観点からは、財政・経済政策が最も重要となる。一般的に、民主党の政策は、自民党に比べて富の分配や福祉問題により重点を置いている。例えば、民主党は「子ども手当て」の支給、公立高校の授業料の無償化、高速道路の無料化を2010年度から実施することを公約している。民主党は総選挙前に、財政赤字を拡大させることなく、これらの政策を実施するための必要な財源についての概要を提示した。

仮に、新政権が政治主導で予算配分を行い、財政資金を効率的に活用できれば、ソブリン格付けにはプラス要因となるだろう。しかし、選挙公約の実施により増大する財政圧力を緩和するための支出削減や予算再配分の方法は、具体性に欠けている。このため、スタンダード&プアーズは、民主党の公約の実施が、国の予算を上回る財政赤字額の発生や財政赤字幅自体の拡大につながるリスクがあると考える。

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