日本の外航海運業界の見通しはネガティブ 《ムーディーズの業界分析》


コーポレートファイナンス・グループ
VP−シニア・アナリスト 廣瀬 和貞

 日本の外航海運業界の見通しはネガティブである。この見通しは、向こう12~18カ月間程度の業界のファンダメンタルな信用状況についてのムーディーズの予想を示すものである。

日本の外航海運業界は、過去約5年間にわたり、中国や他の発展途上国の活発な輸出入を主因に活況を呈していた。ムーディーズの格付け対象である商船三井と日本郵船は、史上最高水準の利益を計上してきた。両社の高い収益性は、好調な市況だけによるものではなく、コストの削減、コストの円建てからドル建てへの転換、事業ポートフォリオの多角化、中長期契約の締結など、継続的な経営努力によるものである。

日本の海運会社2社を特徴付けるのは、多角化された海運事業ポートフォリオである。両社はコンテナ船、ドライバルカー、自動車船、タンカーなど、あらゆる分野の外航海運業を手がけている。多角化された事業ポートフォリオに加え、長期にわたる安定的な顧客との関係に基づく長期契約が、海外競合他社と比べて安定した業績を支えている。

急速に増加する需要を取り込むため、2社は船隊増強のための積極的な設備投資を行ってきた。船隊増強への投資にもかかわらず、両社の財務内容は、留保利益の増加によって最近まで徐々に改善していた。財務レバレッジの改善と高い収益性が両社の長期格付けA3を支えてきた。

しかし、2008年の後半から、業界は世界的な景気後退を要因とする市況停滞の打撃を受けており、2010年3月期の利益は低水準にとどまる見通しである。収益性の低迷が予想される中で、船隊増強への積極的な設備投資による財務レバレッジの上昇をムーディーズは懸念している。日本郵船の財務レバレッジは、海運事業に加えて航空機への設備投資を要因として上昇している。同社は2005年10月に日本貨物航空(NCA)を連結子会社化したが、それ以来、NCAはグループの利益に貢献していない。商船三井も、最近の海運事業の不振を受けて、財務レバレッジの改善ペースが停滞している。

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