『リクルートの女性力』を書いた福西七重氏(ナナ・コーポレート・コミュニケーション代表取締役)に聞く

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--それには、女性採用のときから意識する必要があるのでは。

男だとか女だということより、いい人を採りたい。その一点だった。採用にかける時間と経費はすごい。ある年は83億円かけたこともあった。やっても採用ゼロ人というときもある。内心もったいないと思ったが、いい人がいないから採らないことになった。

--そのいい人とは。

一言で言うと、一緒に仕事をやりたいと思える人。指示を待ち、言われたことだけをやる人より、自分で考えて自ら知恵を出して動く人がいい。当時のリクルートの社訓は「自ら機会をつくり出し、機会によって自らを変えよ」というものだった。これはリクルート事件で棚上げされたが、働く側にとってもわかりやすい。自主的に動いて自ら自分でチャンスをつくってそれを生かしていく人材を求めた。

--そういう人だと、どう見分けるのですか。

面接に時間をかけた。性格類型検査を含めた筆記試験の結果だけでなくて、会社のいろんな層の人に会ってもらう。何段階にも分けてその人をふるいにかけた。欲しい人材には専属のリクルーターを付けたり、累計10時間以上面接したり……。

女性の場合は「就社」ではなく「就職」志向といっていい。職がよければ、つまり自分として満足いく仕事であれば、その女性は力を発揮するし長続きする。だから大きい会社を選んで入るというわけでもない。この仕事をやれないなら辞めてもいいというぐらいにさえ思っている。

--個人的な資質の問題ですか。

結果としてそういう人が集まったが、それだけではない。会社が制度や規則をつくれば、うっかりすると仕事のうえで制約が多くなる。これやあれをやるなというマイナス発想ではなく、これをやったら面白いのではないかという前向き発想を促せる仕組みを心掛ける。会社は制約が少ないほどいい。

人のやらないことをやろう、同じことをやるのだったら違うやり方を考えようと。それで新しい市場をつくっていく。だから自分が発想したこと、提案したことが形になればうれしい。ますます張り切る。そういう仕事のやり方だった。

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