ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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司会 これで一わたり、受賞企業の皆様と審査委員の皆様からのコメントをいただきました。

さて、ここまでの報告やコメントにしばしば出てきたのが、企業のコミットメントだとかダイバーシティと経営戦略との関連です。日々、現場でダイバーシティ推進に取り組んでいらっしゃる方たちは、トップの決意をいかに引き出して具現化していくか、そしてこの厳しい環境の中でどうやって活動を続けていくかというところで苦労なさっておられると思います。そこで、そのあたりのところを受賞企業の皆様に伺いたいと思います。

梅田(日本アイ・ビー・エム) トップのコミットメントをどう引き出すかですが、私は広報担当でもあるので、ダイバーシティのイベントなどを社長ホストで設定して、そこでもうとにかく宣言をしてもらう。社長が代わっても、毎回そういうことをやります。

また、ダイバーシティの進捗度について、社員の人にできるだけ定期的に知らせていくということ、それも社長名で。「これは会社が本気でやっていることです」というものをやるためには、つねに社長か人事のトップの名前でいろいろな情報発信をしていくという努力をしています。

司会 日本の企業だと、秘書室や広報室が原稿を作って持っていくというケースが多いと思うんですが、IBMさんの場合、社長の生の言葉を引き出すことはやってらっしゃいますか。

梅田(日本アイ・ビー・エム) そうですね。定期的に社長の時間をもらって進捗を確認していくときに、「社長にお願いしたいこと」というものをいくつか持っていって、そこで約束してもらうというようなやり方をしています。

司会 直に社長と個別にお会いになる? それとも、日産自動車さんの場合ですと社長直属のダイバーシティ・ステアリング・コミッティがあって、そこと四半期ごとにミーティングすることによって、トップの意向と現場とのサイクルが回っていると伺いましたが、御社の場合、いかがでしょうか。

梅田(日本アイ・ビー・エム) 人事部がそういうふうに時間を取る場合と、もう1つは社長直轄のダイバーシティ・コミッティ(それぞれのリーダーというのは社長が任命した役員)があり、多いときは四半期に一度、そうでなければ半期に一度、そのリーダーが集まって社長に報告をする会というのを設けています。その中でコミットをお互いにするといいますか、役員も自らそのコミットをすべてして、社員に発表します。

司会 では2番目の質問ですが、今後の継続についてお願いします。

梅田(日本アイ・ビー・エム) 経営環境が厳しくなったときにダイバーシティの勢いを弱めると、社員はそれを見ていますから、やはり「本気じゃないな」と思われる。ですから、「それは変わりません」という宣言をいつもするようにします。そういうことが経営環境によって左右されて制度を弱くしたりしてしまうというのでは、まだそれは福利厚生としてやっている段階でしょう。人というのは会社の財産で、人を育てていくというのは時間のかかるものなので、それに対しての投資は削りませんという宣言をしています。

黒瀬(帝人) トップのコミットメントですが、トップはダイバーシティをやったほうがよいと思っているに違いない。ここにいらっしゃる会社さんの社長さんで、ダイバーシティしないほうがいいと思っている会社さんがあったら、それはちょっと疑ったほうがいいと思います。

弊社の社長も、CEOですが、やはりダイバーシティを進めたいと漠然と思っています。それをどのように組織に落とし込んで、どういう施策にしていくかというのを考えて具現化するのが私の仕事だと考えています。大体年2回ぐらい、私も直接CEOと会う時間をもらって、そこらへんの意識合わせであるとかすり合わせをしています。

ついこの間会ったときも、CEOは「ダイバーシティは当然だね。なんで黒瀬さん、苦労してるの?」と。「いや、苦労してますよ」と言うと、「よくわからないな。当然じゃないか」と返ってくる。どんなふうに苦労していて何が難しくてというのをきちんと伝えて、だから何が必要かというのをもっとちゃんと伝えなきゃいけないなと、反省点として思ったんですが、具体的に役員層であったり管理職層であったり中間管理職層であったり正社員層であったり、それぞれの層に対してCEOの思いをちゃんと翻訳して施策に落とし込んで、この施策を使うことが会社のためになるんですよというふうに説明していくのが私の仕事なのだろうなと、あらためて思っています。

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