「嫌われる街」川崎のイメージを変えた消防士 風俗とギャンブルが同居する街の魅力とは

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そこで田村氏は生産者と繋がろうと、人を介して宮前区の小泉農園の当主、小泉博司氏を紹介してもらうのだが、信頼関係を築くためには何か「お土産」が必要と考えた。そこで利用したのがラジオ、J-WAVEだ。

川崎野菜振興のためのラジオ番組はこれまで4回放送され、定着してきた

同局ではリスナーの作りたい番組をリスナーの力で作る「J-WAVE LISTENERS' POWER PROGRAM」というプロジェクトを行っている。これはソーシャルグッドをテーマにリスナーから企画を募集、クラウドファンディングで制作費を集め、それを番組として放送するというもので、田村氏はこれに応募。見事、制作費を調達、川崎の野菜「かわさきそだち」をアピールする番組を始めた。この番組への出演依頼が小泉氏へのお土産というわけだ。

2000人が訪れる「農園フェス」

川崎野菜を広めるためのラジオ番組は「TOKYO MORNING RADIO」。2014年10月29日からこれまでに4回放送され、今後も継続される予定だ。この放送の効果は生産者との信頼関係を築くだけにとどまらなかった。放送を聞いた川崎市の職員なのがゴミ拾いに参加することになったことで、行政との「パイプ」も出来たのである。

田村氏はゴミ拾い活動を始めた頃から、広報戦略としてフェイスブックを活用。毎月2回のゴミ拾いの告知や、活動報告などをアップしている。その活動を1年半続けてからの、ラジオ番組である。これに意欲のある市の職員たちが関心を持ったのだ。

一方、ラジオ放送から始まった生産者との関係作りは、2015年に農園でのフェスティバルにつながった。前述の小泉農園は地元で16~17代続く専業農家でここ4年ほど、知り合いのシェフと2人で毎年イベントを開催していたが、素人2人による運営行き詰まりを感じていた。

農園フェスの様子。都会近くの農地には生産地という意味に加え、学習の場、防災時の避難の場その他様々な役割があると田村氏は言う

そこで、行動力のある田村氏に手伝いを頼んだのがきっかけだ。田村氏は依頼を受けてすぐ、イベント継続には地域の人を巻き込む必要があると実行委員会を設立。フェスには飲食や物販のブースが出るほか、バンド演奏や農業体験のイベントも行われる。昨年3回開かれたフェスでは、農園を経営する社会福祉法人や大学関係者、市内の飲食店などが参加し、初回の来場者は2000人を超えるほど盛況だった。

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