【前田新造氏・講演】“人”が創る企業力−組織を活かすリーダーシップ−(後編)

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●一瞬も一生も美しくあるために

 最後に、私どもが取り組んでいる活動の一つであるコーポレート・メッセージの発信とそれにかかわる化粧の力についてお話をさせていただき、本日の結びにさせていただきたいと思います。
 当社は、30年以上も前から全国の福祉関連施設で資生堂ライフクオリティビューティーセミナーと呼ばれるお肌のお手入れや化粧法の講習会を行なってきており、近年では年1500回以上の開催を数えております。もちろん中国や台湾、さらにはイタリアなどでも積極的に実施をしており、今後世界レベルでの活動にしていきたいと思っています。もちろん無料で、地域の事業所社員や元ビューティコンサルタントなどのボランティア・スタッフが中心となって運営しています。最初は何となく硬い表情のご老人の皆さんの表情が、お化粧が進み、手と手が触れ合い、そして心と心が通じ合うにつれて目はイキイキと輝きを増し、最後にはとびきりの笑顔へと変わっていくのです。「もう一回お見合い写真を取らんとね」と、大変前向きな言葉とともに紅を引いた顔を鏡で見ながら一生懸命に髪をとかされている姿を目の前にして、化粧の持つ力の大きさを改めて実感します。

 資生堂ライフクオリティビューティーセミナーは化粧、美容を通じて豊かな生活を目指す社会貢献の柱として当社が培ってきたかけがえのない活動であると自負もしております。「一瞬も 一生も 美しく」という社会へのお約束の言葉を行動に変え、一人ひとりのお客さまへ真心をこめてお伝えする活動です。社員全員がこの活動に自ら参画することで社会とともに生きる資生堂を体現し、心の底から優しさがにじみ出るような魅力ある人になってほしいと願っています。

 結びとして、先にお話した「資生堂『共育』宣言」を全社員にメッセージしたときの一部の言葉をご紹介して、私の話を終わらせていただきたいと思います。「資生堂のもとには美に憧れる人が集まる。資生堂という場で育ち合い、育て合い、プロとなってさらなる美を創り出す。それをほかの誰かに伝えることに大きな喜びを感じる。気が付くと自分も美しく豊かになっている。それが資生堂である」
(終)
前田新造(まえだ・しんぞう)
1970年、慶応義塾大学文学部社会学科卒業。同年株式会社資生堂に入社。2003年取締役執行役員経営企画部長を経て2005年6月、代表取締役執行役員社長に就任。TSUBAKI、UNOをはじめとした6つの巨大ブランドを軸としたメガブランド戦略による変革を導く。
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