【前田新造氏・講演】“人”が創る企業力−組織を活かすリーダーシップ−(後編)

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●決めるべきときに決断できないことが最も罪が重い失敗

 経営大学院のコースを経て2006年の候補者から4名が、2007年の受講生から2名が執行役員として現在の経営陣に加わっております。そのうち40代が2名おります。彼らを筆頭とする社内の管理職に向けて説いている3つの言葉をご紹介したいと思います。一つは「不作為の罪」。これはリーダーとして組織をマネジメントするに当たり、ノーリスクは無いということを説いております。「Which risk to take」……つまり、どちらのリスクを取るかということです。改革は今までの習慣とはなじまない新たな行動が求められることが多いものです。その場面に直面したときに、一歩を踏み出さず現状に甘んじるといったことが「不作為の罪」になります。チャンスと思ったら勇気を出して一気呵成、積極果敢に行動に出るといったリーダーであってほしいとの私の思いです。
 もう一つは「決断」についてです。完全な人間などいないと私は思っています。しょせん不完全な人間の行なうこと、パーフェクトなどありえない。であるならば、「60%即決主義」。100%まで待っていては時機を失ってしまいます。ならば決断は失敗を恐れずにタイムリーになせということです。決めるべきときに決断できないことが最も罪が重い失敗だと申し上げています。まずやってみて、手直しをしながらパーフェクトに近付けていけばいい。そしてもし間違っていたと思ったらメンツや意地にこだわらず、ダメージが大きくならないうちに決定し直せばいい。少し乱暴な言い方かもしれませんが、「決断とはいったんやってみる仮説だ」と申し上げています。

 最後に「管理職」についてです。地位、役割、肩書きとは組織のために自分の力を発揮するための一時的な役割であると思います。したがって権威は暫定的なものに過ぎません。そのときの組織の便宜的な統制の一機能であり、サービスの一部であると受け止めるべきだと思います。機能や役割もいつかサビが出て摩耗していきます。つまり組織の機能障害になる前に交換しなければならなくなるものだということです。この点から、私は社長就任直後から役職が上に行くほど厳しい会社が当たり前の姿である。つまり私自身も含めて管理職は上から範を垂れることを常に心に止めて行動すべきであると申し伝えております。

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