無傷のヤフー、気がつけば広告の“覇者”、秘訣は既存媒体との共存《広告サバイバル》

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ヤフーの最大の集客装置は、ニュース配信を手掛ける「ヤフーニュース」。1日平均で200万人超の利用者を集める圧倒的なニュースサイトだ。もともとは既存メディアから記事コンテンツを購入することで、ヤフーサイトへの集客を図っていたが、近年は方針を転換。メディアから記事情報の提供を受ける代わりに、記事に提供元へのリンクを配置し、ヤフーから提供元へヤフー利用者を送客、さらに、ヤフーから提供元のサイトに広告配信も行うという「オープン化」戦略を基本とする。

この戦略によって、既存メディアのヤフーへの依存構造はますます強まっている。競合がひしめくウェブの世界では、リアルの世界で比較的ブランド力がある既存メディアのサイトであっても、PVを集めるのは容易ではない。しかし、ヤフーに掲載した記事のPVは、自社サイトより優に数倍から数十倍にハネ上がる。その記事に設置したリンクから得られる集客効果は極めて大きい。ヤフーが記事提供元に支払う情報提供料は記事1クリック当たり数銭とほんのわずかだが、集客を考えれば提供せざるをえない。

大手新聞5社のうち、紙の部数やブランド力では下位に位置する毎日新聞と、産経新聞。しかし、ことサイトの利用では上位と肩を並べるか、上回る存在。この2社は、ヤフーに多くのニュース記事を提供することで利用者を集めているのだ。毎日は5割、産経(サイトはイザ! )は実に9割をヤフーからの送客に依存する(ニールセンオンライン調べ)。

こうしたパワーを背景に、既存メディアから次々と情報を集め、それを自らの集客力に転換する。さらに記事調達のコストも、クリック量に応じた従量制に移行することで効率化を進めているというわけだ。

加えて、既存メディアのサイトはほとんどの場合、ネット広告を集めることができていない。寡占状態の既存媒体では存在感があっても、サイトが無数にあるウェブでは大手メディアといえどもシェアはわずかで広告媒体として力不足。月間数千万PVレベルでは、単独で十分な広告を取ることは困難だ。

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