無傷のヤフー、気がつけば広告の“覇者”、秘訣は既存媒体との共存《広告サバイバル》

拡大
縮小

しかも、ユーザー数が品質に直結する行動ターゲティング広告などネット広告の高度化は加速している。

ヤフーは記事提供元に対して、自らの広告配信プラットフォームを提供。既存メディア側にとっては単独では集められない広告をヤフーから得られる。一方で、ヤフーは広告在庫を拡大、ヤフー内部だけでは対応しきれなかった広告主の需要に応じることが可能になる。

このようなヤフーの広告の多くは、電通子会社のサイバー・コミュニケーションズなどネット広告代理店を通じて調達されるため、直接的にはヤフーは電通などと競合しない。ヤフーの井上社長も「広告会社とも敵対せず、一緒にやっていける」と語る。もっともネット広告代理店の手に落ちる取次手数料は競争の激しさから極めて薄利なのだが……。

では、独り勝ちともいえるヤフーの広告ビジネスに死角はないのか。

最大のリスクは、実は「独り勝ち」しすぎることである。コンテンツを作るのはヤフーではなく、あくまで既存のメディア企業。彼らが、従来の収益基盤をインターネットに侵食され、体力を消耗すれば、ヤフーのコンテンツの品質が下がる。これが進めばヤフーは自らの首を絞めることになるからだ。

「ヤフーと既存媒体は共存共栄。ヤフーの収益力を既存媒体に還元する仕組みを強化する」

経営幹部から現場まで最近、ヤフー関係者がよく口にするのはこの言葉だ。自らの成長と高収益体質を維持しながら、既存メディアの生き残りをどうサポートするか。日本のネットの覇者は、微妙な舵取りを求められるステージに入っている。

■業績・事業概要など企業データの詳細はこちら

(週刊東洋経済)

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT