【産業天気図・電子部品】ハリケーンが過ぎ去った電子部品業界だが、本格回復はまだ先

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

横なぐりの雨は、どうやら通り過ぎたようだ。客先の急激な在庫調整に飲まれ極度の不振に喘いでいた電子部品業界だが、ここにきて需要は底入れの兆しを見せつつある。業界天気図は、2009年度前半については前回(3月)の「雨」を継続するものの、09年度後半を「曇り」に上方修正する。

「一部の製品において需要は回復傾向にあります。しかし、この傾向が続くかは不透明な情勢です」。4月27日に行われた決算説明会の席上、京セラ<6971>の久芳徹夫社長が語ったこの言葉に、電子部品業界の現況が集約されている。 
 
 電子部品を搭載する最終製品の需要が低調であることは今年度も不変だろう。家電メーカー各社は今年度も、パソコンやデジタルカメラなどの販売台数が減少し、薄型テレビも伸び率が鈍化すると見ている。ただ、電子部品業界には、「携帯電話や家電関連の一部で需要が上がってきている」(久芳社長)と、在庫調整期間が終了したとの見方が出始めた。
 
 単価下落の逆風も弱まっているようだ。韓国や台湾など海外メーカーとの競争激化を背景に、代表的な電子部品であるコンデンサーの単価は09年度も約10%ダウンを迫られる公算。だが、一部の製品で25%もの大幅な単価ダウンに見舞われた08年度後半の最悪期からは脱したと見てよいだろう。「(今年度の単価下落の圧力は)前期よりもやや緩やかではないか」(村田製作所<6981>の村田恒夫社長)。

スローペースながらも需要が上向いていることもあって、業界大手各社は業績が下期にかけて回復すると見通す。また、各社ともに大胆な合理化に取り組んでおり、その効果も利益を押し上げる。今10年3月期業績については、京セラが前期に比べて営業利益ベースで微増益、前期赤字のTDKが<6762>も黒字化浮上のシナリオを描く。一方、村田製作所は通期では営業赤字が続くとしているが、人件費削減などの徹底などにより、下半期には営業益ゼロ圏に持ち込む算段である。
 
 もっとも、すべての最終製品の販売が上向いているわけではない。本格回復はまだ先になりそうだ。今年度に電子部品業界が急回復する絵は、現時点では描けない。

(梅咲 恵司)

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