第5回は、同大学で国際化戦略を中心的に進めてきた国際教育センター長の髙橋一男副学長と芦沢真五教授が、大学の目指す姿、育成するグローバル人財像について話し合った。
髙橋一男
専門は社会学、アジア社会論。東洋大学の「国際化」を加速するきっかけとなった国際地域学部における取り組みを中心的に進めてきた
髙橋 東洋大学は、2012年の創立125周年を機に「哲学教育」「国際化」「キャリア教育」を教育の3つの柱に掲げ、グローバル人財の育成を推進してきました。それに先立ち国際地域学部では、専門科目を英語で行うイマージョン教育や、座学とフィールドワークで学生のモチベーションを高めながら学ぶ海外研修を導入するなど、グローバルな場において課題を発見し、解決できる人財の育成を行ってきました。こうした取り組みが2012年に文部科学省「グローバル人材育成推進事業タイプB:特色型(現 経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援)」の採択につながりました。補助金の支援を受ける2012~2016年の5年にわたって国際人財育成事業に取り組むことで、大学全体の国際化を加速するきっかけとなっています。それをふまえ、大学全体の取り組みに発展させていくためには専門家の力が必要であると判断し、国際教育が専門であり、これまで多くの大学等で実績を残されてきた芦沢先生に、本学へ着任していただくことになりました。
芦沢真五
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス、大阪大学、慶應義塾ニューヨーク学院、明治大学国際連携機構などを経て2013年より現職。専門は教育学、教育社会学
芦沢 私が着任した当初、東洋大学には元気でやる気のある学生が多いという印象を受けました。その一方で、当時の東洋大学の国際化は、大学間協定による交換留学制度に学生のニーズをうまく反映できておらず、学部ごとの取り組みが主体となっているように感じました。そして、大学の規模に対して国際化を支えるスタッフの人数も不足していました。まだ改革途上ではありますが、課題に一つずつ着手していくことで、現在ではかなりの改善が進んでいます。新たな取り組み例として、国連ユースボランティア、ワシントンDCでのTWC(ワシントンセンター)インターンシップなど学生がチャレンジングな海外活動に取り組んでいます。文部科学省「トビタテノ留学JAPAN」でもラオスでの教育プロジェクトを推進した学生が表彰されるなど、目立った成果を上げています。
高橋 そして、2014年、わが国の国際化を先導する大学を重点支援する文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」に『TOYO GLOBAL DIAMONDS グローバルリーダーの集うアジアのハブ大学を目指して』と題した構想で採択されました。
芦沢 全国に800近くある大学の中から37大学が選ばれたスーパーグローバル大学創成支援は、これまでの文部科学省の支援事業とは異なり、学部単位でなく大学全体での国際化が求められています。大学改革で取り組むべき課題すべてに対応していかなければならないと言っても過言ではありません。外国人及び女性教員の配置といった多様性の確保から、外国人留学生比率、日本人学生に占める留学経験者の割合、学長のリーダーシップを問うガバナンス改革まで、目標数値を実現するための綿密な計画が求められています。その取り組みも10年間という長期的なものなので、おそらく10年後には本学だけではなく、日本の国際教育が変革しているだろうと思うほどのインパクトがあります。
髙橋 これまで東洋大学は、都市型大規模総合大学として、大学志願者のボリュームゾーンを受け入れ、社会の中核を担う人財を育成してきました。そうした使命を本学の構想にうまく反映させることができたのではないかと考えています。
芦沢 現在のピラミッド型に形成された人財集団を底上げし、ダイヤモンド型の人財集団を目指すことで、グローバル社会の中核を担う中間層を厚く育てたいという意図が含まれています。2017年の開設を構想する国際学部グローバル・イノベーション学科※では、高レベルの少人数教育を実施してダイヤモンド型の人財構造の頂点に位置する世界を舞台に変革をリードできる人財を育てていきます。また、構想名のダイヤモンドには、原石である学生を磨いて輝かせたいというコンセプトも込められています。
髙橋 実際に、グローバル人財を育成していくためには、まず日本人学生向けの留学制度拡充は欠かせません。大学間協定に基づく交換留学だけにとどまらず、留学先の大学で取得した単位を認める認定留学制度や協定校語学留学(短期、長期)、また、留学先として4年制大学の専門課程への編入を目指すコミュニティカレッジを含めるなど柔軟に対応できる体制を整備します。さらに、留学したいが高い英語力が求められ、それが障壁となって留学を断念する学生もいることから、留学先で英語力向上を図りながら専門科目を学ぶブリッジプログラムの開発にも着手しています。
芦沢 日本人学生の送り出しだけでなく、外国人留学生の受け入れ体制も強化します。これまでは、どこか海外の大学へ留学に行き、母国に帰るというパターンが基本でしたが、海外の大学から本学へ留学に来て、また違う海外の大学へ留学に行く、というパターンがあっても良いと考えています。ダイナミックに学生が動く中で、まるでハブ空港のように、本学に多様な人財が集まる「アジアのハブ大学」を目指します。
髙橋 そのためには、EUのエラスムス計画のアジア版ともいえる、国際通用性の高い柔軟な教育プログラムを実現したいと考えています。2016年1月より、「アジア太平洋大学交流機構(UMAP)」の国際事務局を本学が務めることとなり、学長が事務総長に就任しました。アジア太平洋地域の大学生の流動性を高める単位互換や国際編入学の制度確立に取り組み、学生が多様な学びを得られるアジアのハブとしての機能を持つ大学を目指していくこととなります。また、すでに本学では、全学的にセメスター制を進めていますが、いまだにアジア全体では大学のアカデミックカレンダーが統一されていません。セメスター制に統一されたASEAN域内の大学とは連携しやすいと思いますが、アジア全域の大学との連携を考えると今後はクォーター制の導入も検討しなければなりません。そこで、2017年に新設予定の国際学部※と情報連携学部※では、いち早い導入を検討しています。
芦沢 これまでにも生涯教育や社会教育など幅広い人々に教育機会を提供してきた東洋大学らしい取り組みとして、カリフォルニア大学ロサンゼルス校付属の語学教育機関UCLA Extensionと共同で社会人向けのビジネスコミュニケーション講座を展開、シニア、地元の幼児・小学生に対しても英語講座を提供するなど、全世代向けにグローバル教育を行っていきます。グローバル化を牽引する大学となるためには、こうした取り組みを継続的に行っていく必要がありますので、文部科学省による支援終了後も持続可能な仕組みとして事業法人化も構想しています。
髙橋 最も大切なのは、こうした大学改革プログラムを通じて学生が何を学び、どのように成長するかです。グローバルな舞台で活躍できる能力と自信を持った人財を多く育成していきたいですね。
※2017年度開設予定(設置構想中)。学部・学科名は仮称であり、計画内容は変更になる可能性があります。
