グローバル人財の資質をはぐくむ教育 東洋大学
第1回は、世界的なヘッドハンターとして活躍した経験を持つ人財のスペシャリスト、橘・フクシマ・咲江氏を招き、竹村牧男学長と対談いただいた。
竹村 東洋大学は、創立125周年を迎えた2012年から「哲学教育」「グローバル化」「キャリア教育」を教育の3つの柱に掲げ、グローバル人財育成の取り組みを本格化させてきました。同年、国際地域学部の取り組みが文部科学省の「グローバル人材育成推進事業(現・経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援)」に採択され、2014年には本学のグローバル化構想が同省「スーパーグローバル大学創成支援」に採択されました。2017年には新学部・学科の開設を構想するなど、グローバル人財の育成に大学をあげて取り組んでいるところです。
フクシマ 私は1991年から20年間、人財・ヘッドハンティングの仕事をしていましたが、当時の日本にはグローバル人財が見当たりませんでした。2000年代に入ると、中韓がグローバル人財育成に対応してきたことで、日本が10年遅れになった状況を憂慮していました。しかし、ようやくこの5年ほどは、日本でもグローバル人財への関心が高まってきました。企業が海外留学経験を採用選考で考慮するようになり、家庭や学校も、学生を積極的に海外に送り出そうという動きが起きています。
竹村 ボーダレス化した現代では、国内で働くにしても国際感覚・国際的教養が必要となりますので、企業などのそうした動向は当然と思います。本学においても海外留学や海外インターンシップ、海外ボランティアなどのプログラムを拡充し、学生たちにグローバルな活動を体験する機会を数多く提供しています。それらのプログラムを通して、国際社会の中核を担うグローバルリーダーの育成を目指しています。
フクシマ グローバルリーダーの要件は、個人的資質と、職務経験と職務能力で構成される専門的資質に分類できます。人は基礎的能力と性格からなる個人的資質を持って入社し、職務経験を通して職務能力を養い、一部が個人の基礎的能力になるというサイクルを繰り返します。企業の要望を整理すると、大学教育には、この基礎的能力の向上を期待しています。日本人に欠けている基礎的能力の中で、特に不足しているのは多様性対応能力です。その中には、語学力、想定外の事態に対する危機管理能力、異文化理解を含めた多様な人財とのコミュニケーション能力、一から自分で考えて論理的に問題を解決するための力である、創造的問題解決能力なども含まれます。性格的な胆力といったものが必要でしょう。
竹村 本学では、多様な文化・価値観に柔軟に対応し、相手の長所を取り込んで新たな文化・価値観を築けるような異文化理解活用能力を育む基盤教育(教養科目)を用意しています。海外留学支援の充実や、海外からの留学生を増やすキャンパスの国際化も推進しなければなりません。特に、建学以来の伝統がある哲学教育を生かし、高度な倫理観や使命感、公共性や公益性への理解を深める教育を拡充したいと考えています。海外の大学の先生からは、現地従業員や地域を大切にする日本企業の姿勢を高く評価する声を聞きます。相手国への貢献も考えた企業活動は、今後ますます重要になるはずです。