混迷の再編劇 大証に抵抗するジャスダック

混迷の再編劇大証に抵抗するジャスダック

取引所再編の第一歩は土壇場でつまずいた。大証とのシステム統合案を否決したジャスダック。株独占保有にも反対の姿勢だ。乱立ぎみとされる新興市場の再編はなるのか。

3月24日午後、ジャスダック証券取引所の筒井高志社長は予想外の事態に慌てた。取締役会に諮った大阪証券取引所との売買システム統合案が、取締役8人の反対多数で否決されたのだ。

「業務・技術面においては有用性を認識したが、条件が不十分だった」。否決の理由を説明する筒井社長。ジャスダックは「経営統合は否定せず、システム一本化に向けた協議も継続する」ものの、来年9月の更新時期との関係で、中断していた次期システムの開発作業を再開した。

72.6%のジャスダック株を保有する日本証券業協会の主導で進む大証・ジャスダック統合案。日証協が3月31日に開く特別委員会は、大証へのジャスダック株の売却方針など、当初は再編計画の最終決定を想定していた。ところが、その大前提となるシステム一本化が合意できない事態となり、特別委が最終判断を下すのは困難な情勢だ。

システム統合見送りとともに、ジャスダックは「我が国新興市場のあり方」との表題で見解を公表。「特定株主の意向で、市場が運営されるのは望ましくない」との趣旨の記述は、大証によるジャスダック株の過半数取得を牽制する動きと見てよい。

ジャスダックにとって抵抗カードはまだある。有価証券報告書を提出する同社の株式を3分の1以上取得する場合は、上場企業と同様に株式公開買い付け(TOB)を実施しなければならない。金融商品取引法は、TOBに対して経営者が意見を表明できる。ジャスダック株には譲渡に当たり、取締役会の承認が必要との制限条項もある。

口銭高いジャスダック

大詰めの段階で、突如抵抗に出たジャスダック経営陣。システム費用の負担などで有利な条件を引き出すための駆け引きなのか、それともいまだ単独経営をあきらめていないのか、真意は定かでない。

仮に大証ヘラクレスと統合すれば、ジャスダックは将来かなりの合理化を迫られる可能性が高い。安東俊夫日証協会長は再編の理由として「高い場口銭の見直し」を挙げている。土壇場での役員陣の反乱は、リストラへの抵抗と考えられなくもない。

場口銭とは、株式取引の仲介で証券会社が取引所に払う手数料。ジャスダックでは100万円の売買に際して、200~400円程度の場口銭が生じる。一方、大証の場口銭はジャスダックの7分の1~10分の1にすぎない。

ジャスダックの2007年3月期の営業収益は105億円。うち場口銭収入は76億円だ。もし大証並みに場口銭を引き下げたら、営業収益は40億円以下まで減る計算となる。対して07年3月期の販売費・一般管理費は77億円にも上る。そのうち、人件費は約20億円。システム統合による大幅なコスト引き下げは当然のこと、労務面にもメスが入る公算は大きい。

故巽悟朗氏がトップだった時代から大証は合理化に邁進、取引所としていち早く上場を果たした。1人当たりの営業収益を見ると、大証が7800万円なのに対し、ジャスダックは6300万円。後者のコスト高は明らかだ。かつてジャスダックの売却先候補に上がった東京証券取引所の幹部は「買収を試算したが、(そのままでは)採算は取れそうになかった」と話す。

「乱立する新興市場再編の第一歩」(新興市場株に詳しいマーケット・ウォークの鮎川良社長)と位置づけられる統合案。が、その一歩はなかなか進まない。株価低迷でジャスダックの07年4~12月期業績は営業利益で1億円程度しか稼げていない。もし単独での生き残りが可能と考えているのなら、ジャスダック経営陣は具体的な策を示す必要がある。それができないなら、抵抗は徒労に終わる。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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