北海道新幹線は試乗会の後も不安がいっぱい "北の大地"で新幹線を待ち受けるハードル

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新函館北斗のホームに入線してきた北海道新幹線の車両(撮影:尾形文繁)

「ただいま列車は時速210キロメートルで運行しています」――。10時ちょうどに新函館北斗を出発した車両は、木古内に向けてグングンとスピードを上げた。

1月28日に開催された、北海道新幹線の試乗会。本来なら時速260キロメートル運転のはずだが、雪のために速度が制限された。50年も前に東海道新幹線が達成した速度だ。初の試乗会という晴れ舞台にしては物足りないが、安全のためであれば仕方ない。“北の大地”で初めて経験する高速走行に、車内から歓声が上がった。

列車はわずか13分で木古内に到着。車内整備の後、乗客を乗せ、再び新函館北斗に向かって走り出した。トンネルを6つ抜けると、右側の車窓の遠くに、牛が寝そべったような函館山の姿が見えた。ただ、在来線と違って、新幹線は函館山に近づくことなく、間もなく周囲の山並みに埋もれてしまった。

新函館北斗駅は、函館駅から18キロメートル離れた内陸部にある。函館市内に行くには、同駅で在来線に乗り換えなければならない。「空港よりも遠くにある新幹線駅って、函館ぐらいでないかい」。たまたま乗ったタクシーの運転手が、ぽつりとつぶやいた。

地元の期待は高まるが…

1994年に市街地から遠く離れた場所への新幹線駅設置が決まった際、それを認める条件として、短絡線や新駅からのスイッチバックなどによる新幹線の函館駅乗り入れを検討するという約束が、函館市と北海道の間で取り交わされた。2003年の新駅舎建設時には、函館駅を新幹線対応にするため、市がJR北海道に50億円の補助を行った。

ところが、最終的に新幹線の乗り入れは実現しなかった。それでも、函館市民の顔は明るい。市内で出会った人の多くが「一度は乗ってみたい」と口をそろえた。

物珍しさも手伝って、開業当初は間違いなく人気を集めるだろう。問題は、ブームが一巡した後にどれだけの人が利用するかという点だ。現時点では、甚だ心もとない。その理由はいくつもある。

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