大阪・不動産市況-キタもミナミも続々竣工、“不運”の再開発ラッシュ《不動産危機》

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 足元の空室率も上がったとはいえ、三鬼商事のデータで大阪は7%台。10%に近づく名古屋や2ケタにあった過去の大阪とは違ってまだ相対的に足元の傷は浅い。東京や名古屋が00年代以降、オフィス供給を拡大したのに比べて、経済回復が遅れた大阪では長期間、新規供給が絞られてきたのも大きい。

だが、大阪市内では今、梅田に限らず各地区が大規模再開発を競って進めている。下のグラフに示すとおり、09~14年までの供給面積は、02~08年までと比べ、年平均でほぼ倍増する。特に09年は増加した08年の2倍、単年ではバブル期をもしのぐ14万坪(延べ床ベース)に近づき、来年も延べ床12万坪を超す高水準の供給が続く。

今後数年間を見れば、東京、名古屋の新規供給が減少基調に入るのに対し、大阪は激増し、需給悪化要因となる。景気の回復時期が遅れ回復力も弱ければ、バラ色の未来が暗転しかねない危うさをはらむ。

積水ハウスが大阪のメインストリート御堂筋に面する地下鉄本町駅周辺一等地で進める、二つの大規模再開発。最初に立ち上がる「本町ガーデンシティ」では、その上層階に入る予定の高級ホテルに撤退の観測が挙がるが、「ホテル以外のテナント集めも苦戦している状況はない」と会社は完全否定する。「当時の相場の倍」(関係者)で土地を購入し、大阪の不動産高騰の象徴的事例にもなっている、そのすぐ南の「本町南ガーデンシティ」。ここにも経済情勢の悪化で高コストに見合う収益が確保できるのかという懸念が出ているが、今年に入って工事に着手した。「今のままだとどうなるか」と、地元不動産業界もかたずをのむ。

大規模オフィス開発がなかった梅田地区では「供給すれば需要が生まれる」と北ヤード開発を主導する三菱地所などは、中長期でのプロジェクトへの自信をのぞかせる。

ただ、この仮説が正しいとしても、「コアの梅田に優良物件が増えれば、他の地区の需要が奪われる」と見る不動産関係者は多い。三菱地所では、「アジアや大阪以外からのオフィス需要も呼び寄せる」と言うが、それに大きな期待を寄せるのは危ない。大阪市内ビジネス地区間での限られたオフィス需要というパイをめぐる「天王山の戦い」が早晩勃発するのは必然だろう。

(※記事中、テナントの状況等は3月下旬時点です)
(週刊東洋経済)

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