【福澤武氏・講演】日本企業文化へのパラダイム転換(その7)

東洋経済新報社主催フォーラム
「理念重視型経営が創る成長基盤とリスク管理」より
講師:福澤武

その6からの続き)

●技術の発達に伴う細分化

 今からもうかれこれ60年ほど前の1949年、「ゲーテ生誕200年祭」がコロラド州のアスペンというところで行われました。そこで、シカゴ大学のハッチンスという総長が演説をしまして、「今の時代、現代は瑣末な専門家によって脅威にさらされている。古典に親しみ、自立的に物事を判断できる人間を育てる必要がある」と話されたのです。まさにハッチンス総長がそう言った通り、今の世の中は本当に瑣末化しています。これは、ある程度やむを得ません。技術が発達すれば、物事は段々と細分化していくわけです。
 もちろん技術部門だけではありません。社会科学の部門においても非常に瑣末化していますね。会社でもいろいろな部門が細分化されてきて、その専門家が必要になってきているわけです。しかし専門家は、視野が狭くなる危険性がありますから、その専門家の知識を使って統合的に物事を考える人がいないと、どんどんおかしなことになります。
 サブプライム問題なんてそうじゃないですか。あの専門家たちがいろんなことを考えてやった挙句がああいう問題になったわけですよね。だからハッチンス教授が言っていた、瑣末化された専門家によって脅威にさらされている。まさにそうですね。ですから企業が普段からそういうことに対してどう対応していくか、少なくとも自分の企業の中でどうしたらいいかということを考えていかなければならないのではないでしょうか。

 ですからCSRですが、私にしてみれば隠語だか符丁だか、こんなものやたらに使うから分かりにくいのですが、これは企業の社会的責任ということではないでしょうか。これは普通のことを当たり前の言葉で考えればいいのではないかと思います。そういうことが欠如してくると、段々とおかしなことになってくるのではないか、私はそういう風に思うのです。
 21世紀はコスト高の時代だと思っています。例えばさっき申し上げた環境問題。これもコストがかかります。いろんな点で環境に配慮してやっていくとコストがかかるのです。それから従業員についても、少子高齢化対策。女性が出産・子育てをしやすくする。そうすると産休が必要になってくるわけでしょう。やはりどうしたってコスト高になってくる。しかし、これも今の世の中で企業が責任を負わなければならないわけです。そういうことを考えていくと、この今の時代、やはり企業の責任は非常に重い。ものすごく難しい時代です。それをどうやって乗り越えていくか。これを考えていかなければなりません。それが今の時代であろうと私は考えているわけです。

 つかみどころのないような話だったと思いますが、この話から皆さんそれぞれ何か一つぐらい参考になったことがあれば、それを今後に生かしていただければ幸いです。
(終)
福澤武(ふくざわ・たけし)
慶應義塾大学法学部卒業後、1994年より三菱地所株式会社・取締役社長、2001年より同取締役会長、2007年より取締役相談役を経て現職。同相談役を務める傍ら、大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会会長、千代田区教育委員、日本アスペン研究所理事など幅広く活動。著書に『「丸の内」経済学』(PHP研究所)など。
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