”花育”が人気、子どもの個性がスクスク育つ? 

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 ガーデニングブームなどがある半面、切り花市場は規模の伸び悩みが続く。昨年5月の農林水産省発表によると、07年度の切り花卸売市場規模は約3300億円で前年度横ばい。年間の切り花購入頻度も10回程度と長らく足踏み状態だ。「なんとかして花の消費を拡大できないか」--。そこでひねり出したのが、幼少時から花に親しむことで抵抗感をなくし、将来的な需要拡大へつなげる「花育」というアイデアだった。
 
 早速、06年秋から品川区の児童会館で幼児や小学生向けに教室を始めたが、船出は順調とは言い難かった。「子供たちに花の普及活動をしてどうする」「花は農薬を使っているのだから親から文句が出るんじゃないか」。意気込む高杉さんとは裏腹に、周囲からは懐疑的な声も聞こえた。
 
 それでも、地道に活動を続けるうちに、児童会館の職員や父母、マスコミなどを通じて口コミで活動が知れ渡っていった。現在では、品川区の2カ所の児童センターで幼児と小学生向けに月1回ずつ教室を開くほか、保育園や小学校などからも引き合いがあり、「多いときでは月5~6回教えている」というほどの盛況ぶりだ。

自治体や企業からの関心も高い。07年10月には長崎・ハウステンボスでの花のイベントに参加したほか、良品計画が07年夏に開催したキャンプでも教室を開催。最近ではサンリオの「花育キッズプログラム」にも協力をしている。

着々と広がる「花育」だが、高杉さんは「会社として社会貢献するだけでなく、ビジネスにできないと意味がない」と言い切る。「ただ1回のイベントでは花好きも育たない。それよりは、定期的に教えられる場を増やす一方で、花屋も子どもが興味の持てる花やサービスを提供しないと」(同)。
 
 高杉さんの原動力になっているのは、ある危機感だ。「お花屋さん」はかつて子どもにとって「将来なりたい職業」の上位常連だったが、ある保険会社の調べでは近年は10位以下にランクダウン。多くの子どもにとって、花は身近どころか、どんどん遠い存在になっていくばかりなのだ。

そこで思い描くのが、花育教室や子供向けのアレンジなどもそろえ、親子で通える「花育ステーション」の設立だ。「今は子ども向けビジネスには商機があるし、チャンス。花育には教育的な要素もあるから、受け入れられやすいと思う」(高杉さん)と意気込む。今後はたとえば玩具企業など、子どもや花に関心の高い企業と提携するなどしながら、より具体的なビジネスにつなげていきたいと考えている。

花育から花消費拡大へ--高杉さんの夢は大輪の花を咲かせることだ。

(倉沢 美左=東洋経済オンライン)

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