”花育”が人気、子どもの個性がスクスク育つ? 

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 アレンジメントが始まると、親たちは退室。親が、つい手を出してしまうのを避け、子ども独自の感性にまかせてアレンジできるようにするためだ。親たちが去るといよいよ本番。子ども達は教室に並んだ花材の中から好きなものを自分で選んで、切ったり、スポンジに挿したりと夢中に花と戯れる。そうこうしながら、アッという間に作品を作ってしまう。他の子の作品はおかまいなし、で独自路線をひた走る。「子どもは大人と違って、『うまくつくろう』という発想もないし、バランスや色合いを考えたりしないから早い」と高杉さんは感心する。

それぞれの作品への評価はしない。花をアーチのように折り曲げて挿したり、背の高い花を真ん中にざくざく並べたり、作品は一人ひとり全く異なる。それこそ、まさに各自の個性を引き出したい、高杉さんの狙うところだ。「親たちからも『自分の子どもがこんなことできるとは思わなかった』と好評だ」と喜ぶ。

花器にも工夫が見え隠れする。通常の花瓶などは利用せず、たとえばタマゴパックやペットボトルなど、どの家庭にでも当たり前にあるような身近なものを使うことで「花を買っても飾る場所がない、という人がいるけれども、飾る場所は何も花瓶だけじゃない、ことを教えたい」と高杉さん。家に花を飾るのは、ともすると「敷居が高い」とは思われがちだが、身近にあるものを利用することで花との距離がグッと縮まるというわけだ。

花と触れ合うことで子どもたちにも少しずつ変化が出てきた。「花は弱いもの」と理解して扱いがていねいになったり、泥をさわれなかった子が気にしなくなったり、道端や花屋の前で興味を持って立ち止まるようになった子もいるという。

ビジネスにつなげなきゃ意味ない、花消費拡大の足掛かりに

高杉さんが「花育」にたどり着いたのは自然の流れだった。

東京育ちだが、幼いときから花のある生活は当たり前だった。小学校の頃は祖母の家に咲く花を学校に持っていき、花屋になることにあこがれた。中学、高校では華道部にも所属。就職後も、花への情熱は冷めることなく、フラワーデザイナーの資格や押し花インストラクターの免許を取得するなど、「いつかは花に携わる仕事をしたいと考えていた」(高杉さん)。
 
 転機が訪れたのは26歳の時だ。満を持してフローレに転職、念願の花業界に足を踏み入れた。事務職から経験を重ね、妊娠・産休明けに営業企画部に異動。直後に取り組んだのが新規事業の提案だった。


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