キユーピー、好調決算に潜む卵高騰の重し 第三の柱、サラダ・惣菜の育成は途上

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主要原料の価格変動に左右されず、着実に利益を上げるためには、臨機応変な価格政策が求められる。2015年12月、キユーピーは、オムレツや卵焼き、スクランブルエッグなど業務用タマゴ加工品の価格を、約2~7%引き上げた。同社は、この値上げによる増益効果が今年いっぱい持続する、とみている。

家庭用マヨネーズについては、2013年夏に値上げを実施して以来、価格改定を行っていない。当時は食用油相場の高騰に応じ、マヨネーズの価格を約4~9%引き上げた。だが、キユーピーは足元の食用油相場の上昇に2013年当時ほどの勢いがないことから、直近のマヨネーズ値上げはないとしている。

期待がかかるサラダ・惣菜

原料価格の変動による影響が比較的小さい事業も重要だ。キユーピーは、マヨネーズ・ドレッシング(調味料事業)、タマゴ加工品(タマゴ事業)に次ぐ第三の柱として、サラダ・総菜事業を育成中。同事業は家庭用のカット野菜や、コンビニ向けの弁当・おにぎりを展開しており、調味料事業とタマゴ事業に比べ、原料価格の影響を受けにくい。

前期のサラダ・惣菜事業の営業利益は27億円。現時点で同事業は、調味料事業の4分の1ほどの利益貢献にとどまっているが、タマゴ事業には肉薄しつつある。機械化による生産性の向上、コンビニ向け製品のスーパーにおける展開拡大によって、今年から始まる新しい中期経営計画の最終年度に当たる2018年には、営業利益50億円を目指す。

中計では海外事業の飛躍的成長を打ち出したキユーピー。海外展開の拡大に伴い、マーケティングコストの増加も予想される。主軸である国内での原料高対策は待ったなしだ。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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