【産業天気図・外食】外食は消費者心理冷え込む。材料・人件費高も逆風となり「曇り」

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外食業界の2008年度は需要停滞に加え材料費高騰も逆風となり年間を通じて「曇り」が続きそうだ。食の不祥事や相次ぐ食品の値上げ、中国産冷凍餃子が原因と見られる健康被害を受けて消費者心理が冷え込んでいる。コンビニ・デパ地下など中食との競争が激化するなか、材料費高騰やアルバイトなどの人件費上昇も収益を圧迫して厳しい1年となりそうだ。
 ファーストフードは引き続き堅調だが、08年に入り売り上げの伸びがやや減速している。日本マクドナルドホールディングス<2702>は24時間店舗の拡大やコーヒーの投入で客数を伸ばすものの、100円商品の増加で客単価が下がっており、売り上げの伸びにやや陰りも見える。人件費の上昇もリスクだ。同社店長が残業代支払いを求めて起こした裁判で敗訴しており、今後は処遇の改善を行う公算も高く一定の営業利益押し下げ要因となるだろう。吉野家ホールディングス<9861>は牛丼の24時間販売を3月20日より再開。ただ、同社が使用するアメリカ産牛肉の全面輸入再開はまだ未定で価格は高止まりしており、収益を更に押し上げるのは輸入再開を待ってからとなりそうだ。
 一方、コーヒー店は材料費高騰を値上げで補う。ドトール・日レスホールディングス<3087>はコーヒー豆や小麦粉等の価格上昇に伴い3月からドトールコーヒー、エクセルシオールともに20~30円ほど値上げ。スターバックスコーヒージャパン<2712>もフードを10~40円値上げする。         
 苦戦が続いているのがファミリーレストランだ。ガソリン価格の高止まりや飲酒運転の取り締まり強化で郊外店の来店客が目減りしている。ロイヤルホールディングス<8719>は月間客数が07年夏以降、前年同月比約6~10%減と苦戦しており売上高が低迷。人件費等経費の抑制や、女性客向けの新商品を投入するものの、厳しい戦いを余儀なくされている。イタリアンのサイゼリヤ<7581>も07年秋以降の月間客数は同2~5%減と苦戦。サイドメニューの販売促進で客単価を引き上げ前年並みの売り上げを確保しているが、売上高が前年同月比をやや下回る月も出ている。
 居酒屋業態はワタミ<7522>、大庄<9979>は底堅いが、4月以降、大手ビールメーカー各社が最終商品で3~5%の値上げを想定しており足かせとなりそうだ。ワタミは3月から中ジョッキを40円値上げした。今後、居酒屋業態数社のビール値上げが続く見通しだ。外食産業は客離れが続くなか、材料費や人件費は上昇して値上げを余儀なくされ、対策に追われる1年となりそうだ。
【山本 亜由子記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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