【産業天気図・海運業】どしゃ降り脱するが09年度通じて「雨」

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 09年度後半は、中国とブラジルの鉄鉱石の売買価格交渉が9月末までに決着していることを前提に、バラ積み船が運賃、貨量ともに上向く。自動車やデジタル家電の生産調整や流通在庫の調整完了で荷動きがやや戻るだろうが、08年度前半のような貨物量や高運賃は期待できそうもない。09年度後半も営業赤字になりそうなのは、新和海運、太平洋海運の2社。黒字の会社は前年同期の08年度後半や前半期の09年度前半との比較では増益となりそうだが、増益幅は小幅で、利益水準的には「依然底ばい」といったところ。

日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手海運3社は、商船三井や海外海運大手が欧州でコンテナ船の運賃値上げを段階的に行い、他社がその恩恵を被る形で09年度後半には欧州コンテナ船が黒字化しそうだが、北米のコンテナ船では運賃の値下げ要求の圧力が強く、コンテナ船全体では依然として部門赤字が続く見通し。相対的にコンテナ船の比率が高い川崎汽船にとっては、09年度は前半も後半も厳しい状況が続きそうだ。一方で、バラ積み船は3月に大型、中型、小型ともにスポット運賃が採算ラインを超えている。過去最高値をつけた08年度前半のような空前の好況は望むべくもないが、中長期契約も多いために、バラ積み船が収益を下支えすることになりそうだ。タンカーは安定的に推移することが見込まれる。

傘下に日本貨物航空(NCA)を擁する日本郵船は、航空貨物の荷動き回復が鈍く、引き続き航空貨物部門がお荷物となりそう。自動車船のシェアが4割強と自動車船にもともと強いことも、日本郵船にとっては今までは手堅さの表れだったが、足元では裏目に出ている格好だ。こうした背景から、03年度から続いている「業界最大手は売上高では日本郵船、利益では商船三井」の業界構図は09年度も続くのではないか、と「東経オンライン」では見ている。

大手海運3社の連結営業利益を半期ベースで追うと以下のようになる。いずれも09年度通期の営業利益が08年度前半の半期分の営業利益にすら到達しないという厳しい予想となっている。

営業利益  08年度前半 08年度後半 09年度前半 09年度後半
 日本郵船  1348億円  242億円  400億円  570億円
 商船三井  1646億円  354億円  400億円  700億円
 川崎汽船   747億円   23億円  120億円  180億円

注)08年度前半は各社実績数値、08年度後半以降は東経オンラインの独自予想。

(山田 雄一郎)

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